医療の採用代行(RPO)とは|任せられる範囲と職種別の使い分け

医療の採用代行(RPO)とは、求人原稿の制作から求人媒体の運用、応募状況の分析までを外部に任せる仕組みです。人材紹介が「人」を連れてくるのに対し、採用代行は「採用活動そのもの」を代わりに回します。

ただし医療機関の場合、「医療の採用」とひとくくりにして任せると失敗します。同じ院内でも、看護師の有効求人倍率は1.94倍、医療事務が含まれる一般事務従事者は0.29倍。採れない職種と、募集すれば集まる職種が同居しているためです(厚生労働省・令和8年7月)。

医療事務・受付の募集に絞った進め方は医療事務の採用代行で扱っています。

この記事では、医療の採用代行に任せられる業務と任せられない業務の境目、職種ごとの使い分け、そして病院とクリニックで委託範囲が変わる理由を整理します。

この記事の要点

医療の採用代行で任せられるのは「母集団を作るまで」。面接・選考・採否は医療機関側に残ります。職種と施設規模によって、任せるべき範囲は変わります。

  • 職種で事情が逆転する看護師1.94倍・医療技術者3.07倍に対し、一般事務従事者は0.29倍。同じ院内で扱いを変える必要があります。
  • 選考代行には許可が要る候補者の絞り込みや推薦は職業紹介にあたる場合があり、有料職業紹介事業の許可が必要です。
  • 病院とクリニックで範囲が違う採用担当がいる病院は媒体運用の部分委託、院長が兼任するクリニックは全面委託が現実的です。

「どこまで任せるか」を先に決めてから、委託先を選びます。

弓川堅士

弓川堅士

株式会社Abey
代表取締役

この記事の監修者

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長として組織づくり・採用業務を担い、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。現場で日々採用に向き合っている実務者の視点から、本記事の内容を監修しています。

目次

医療の採用代行(RPO)とは、採用担当の仕事を外に出すこと

RPOは Recruitment Process Outsourcing の略で、日本語では採用代行・採用アウトソーシングと呼ばれます。採用活動の工程を切り出して外部に委託する仕組みで、医療分野に限った言葉ではありません。

医療機関でこれが使われるのは、採用の担当者がいないか、いても他業務と兼任しているケースが多いからです。クリニックでは院長や事務長が診療の合間に求人を出し、応募が来たら自分で返信する。この体制では、求人原稿を書き直したり、媒体ごとの反応を比べたりする時間が取れません。

採用代行は、この「手が回らない部分」を引き受けます。RPO全般の定義や料金体系の種類は採用代行(RPO)とは?業務内容と費用相場、人材紹介との違いで詳しく整理しています。

人材紹介との違いは、受け取るものが違う

混同されやすいのが人材紹介です。両者は「採用を助ける」点では同じですが、医療機関が受け取るものが根本的に違います。

人材紹介採用代行(RPO)
受け取るもの候補者そのもの採用活動の実務
費用の発生採用が決まったとき月額または業務量に応じて
1名あたり看護63万9千円・医師82万4千円
(令和5年度実績平均)
採用人数では変わらない契約もある
採用ノウハウ院内には残らない原稿や運用の型が院内に残る
必要な許可有料職業紹介事業の許可業務範囲によっては不要

人材紹介は「採れるまで費用が出ない」点が利点ですが、採れた瞬間に数十万円が一度に出ます。採用代行は先に費用が出る代わりに、何人採っても金額が変わらない契約形態があります。どちらが有利かは、年間の採用人数で決まります。

医療の採用代行に任せられる業務・任せられない業務

ここが最も誤解の多いところです。「採用を丸ごと任せられる」と考えて契約すると、実際には面接の設定も採否の判断も院内に残っていた、ということが起こります。

  • 任せられる:求人原稿の制作職種ごとに原稿を分け、勤務条件・スタッフ構成・残業の実績・ブランク可否などを書き切ります。医療職は「何人体制か」「オンコールがあるか」を見て応募を決めるため、ここの精度で応募数が変わります。
  • 任せられる:求人媒体の運用Indeed、求人ボックス、エンゲージ、Airワーク、ジョブメドレーなどへの出稿と、予算配分の調整です。医療職は医療専門媒体と汎用媒体で反応が分かれるため、併用して比べる必要があります。
  • 任せられる:効果測定と改善職種別の表示回数・クリック・応募数を見て、原稿と出稿先を週単位で直します。「応募が来ない」のが原稿の問題か、媒体の問題か、条件の問題かを切り分ける工程です。
  • 任せられる場合がある:応募者への一次連絡委託先によって対応が分かれます。代行会社が院の名前で日程調整まで行う場合もあれば、応募が来た時点で院に引き渡す場合もあります。契約前に必ず確認する項目です。
  • 任せられない:面接・選考・採否の判断誰を採るかは医療機関の判断です。ここを外部に委ねることはできません。

選考まで任せるには「有料職業紹介」の許可が要る

採用代行会社が候補者を集めて絞り込み、医療機関に推薦する——この形は、実態として職業紹介にあたる可能性があります。職業紹介を事業として行うには、職業安定法にもとづく有料職業紹介事業の許可が必要です。

そのため採用代行会社は、大きく2つに分かれます。許可を持ち、選考の一部まで踏み込む会社。許可を持たず、母集団を作るところまでを担当する会社です。後者は「人を紹介する」のではなく「求人を届ける」役割に徹します。

どちらが良いという話ではなく、依頼したい範囲と、相手の業務範囲が合っているかが問題です。「選考まで任せたい」なら許可の有無を確認してください。「応募さえ集まれば面接は自分たちでやる」なら、母集団づくりに特化した会社のほうが費用は下がります。

医療は「ひとくくり」にできない。職種で事情が逆転する

医療の採用代行を検討するとき、最初に見るべきは職種別の需給です。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月・全国計・常用)を見ると、医療に関わる職種の有効求人倍率は次のようになっています。

医療関連職種の有効求人倍率を比較した横棒グラフ。医療技術者3.07倍、保健医療サービス職業従事者2.71倍、看護師1.94倍、医師・薬剤師等1.66倍、職業計1.05倍、一般事務従事者0.29倍
同じ医療機関で募集する職種でも、需給は10倍以上違う(厚生労働省・令和8年7月)
職種区分有効求人倍率状況
医療技術者3.07倍求人3件に求職者1人
保健医療サービス職業従事者(看護助手など)2.71倍売り手市場
保健師、助産師、看護師1.94倍売り手市場
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師1.66倍母集団そのものが小さい
職業計(全職種)1.05倍—
一般事務従事者(医療事務・受付を含む)0.29倍求人1件に求職者3.4人

医療技術者と一般事務従事者では10倍以上の開きがあります。つまり同じ院内でも、「募集しても人が来ない職種」と「募集すれば人が集まる職種」が同時に存在しています。

看護師について補足すると、ハローワーク経由の紹介件数7,080件に対して就職件数は3,403件。会えればおよそ半分が決まっています。看護師採用の難しさは「面接まで進んでも決まらない」ではなく、「そもそも母集団が作れない」ほうにあるということです。だからこそ、母集団づくりを外部に任せる意味があります。

この需給差を費用の面から掘り下げた内容はクリニックの採用コスト|職種別の相場と一人当たりの削減方法にまとめています。

病院とクリニックで、任せる範囲は変わる

同じ「医療の採用代行」でも、施設の規模によって依頼すべき範囲は変わります。判断の軸は「院内に採用の実務を担当できる人がいるか」の一点です。

病院(人事・総務がある)クリニック(院長・事務長が兼任)
院内の体制採用担当が存在する診療の合間に対応
足りないもの媒体運用の知見と手数担当者そのもの
適した委託範囲原稿制作と媒体運用の部分委託母集団づくりの全面委託
院内に残す業務要件定義・選考・内定後の手続き応募者への返信・日程調整・面接・採否の判断
成果が出る条件院内担当と代行側の窓口が一本化されている応募への返信が当日中にできる

病院で起きやすいのは「窓口が分散して、代行側が判断できなくなる」状態です。看護部・事務部・人事でそれぞれ要望が違うと、原稿の修正が止まります。委託前に、代行会社とやり取りする担当を1人決めておく必要があります。

クリニックで起きやすいのは逆で、応募が来たあとに止まるケースです。代行会社が母集団を作っても、返信が3日後になれば応募者は他院に決まっています。医療職は複数の求人に同時応募するのが普通だからです。組織が小さい分、クリニックは大きな病院より速く動けるはずで、ここは委託範囲の外にある勝ち筋です。

看護師の採用を軸に考えている場合は看護師の採用代行サービス(月額10万円〜)のページに、対応範囲と進め方をまとめています。

医療の採用代行の費用と、人材紹介を使った場合の比較

採用代行の料金は、月額定額型と成果報酬型、業務量に応じた従量型に分かれます。医療分野を扱う会社では月額10万円台から50万円程度までが一般的な幅です。

比較の相手になるのが人材紹介の手数料です。厚生労働省が公表している医療・介護・保育分野の実績平均(令和5年度・常用就職)は次のとおりです。

職種平均手数料額(令和5年度実績)
医師82万4千円
看護63万9千円
保育64万6千円
介護55万1千円
(参考)全業種の常用就職1件あたり約103万円(令和6年度)

この平均額はパートを含む常用就職の実績値のため、常勤の経験者に絞ると金額は上がります。それでも看護師1名の紹介手数料63万9千円は、月額10万円の採用代行のおよそ6か月分にあたります。年に2名以上を採るなら、費用の面では自院募集への切り替えが効いてきます。

看護の紹介手数料は、地域で1.57倍違う

同じ統計をブロック別に見ると、看護の平均手数料には大きな地域差があります。

看護職の職業紹介手数料の地域ブロック別平均額を比較した横棒グラフ。北陸74.0万円が最高、北関東・甲信47.2万円が最低、全国平均63.9万円
看護の平均手数料額はブロック間で1.57倍の差がある(厚生労働省・令和5年度実績)
ブロック看護の平均手数料額
北陸74万円(最高)
東海72万3千円
東北67万7千円
近畿66万2千円
南関東65万7千円
全国平均63万9千円
中国59万5千円
北海道・四国(両ブロック同額)53万2千円
九州50万8千円
北関東・甲信47万2千円(最低)

賃金水準が高い地域ほど手数料が高いわけではない点に注意してください。紹介事業者の競争環境と、その地域で紹介がどれだけ使われているかによって単価が決まっています。手数料の高い地域ほど、自院募集に切り替えたときの節約幅は大きくなります。

もう一つ見ておきたいのが定着です。同じ統計で、紹介により就職した看護職の6か月以内の離職率は10.5%(令和4年度実績・無期雇用、判明せず2.4%は外数)。医師の3.0%と比べると3倍以上です。手数料の返還規定は多くの場合3か月前後で効かなくなるため、6か月で辞めた場合の費用はほぼ戻りません。

看護師の採用単価と早期離職の詳細は看護師の採用単価|紹介手数料の相場83万円と中途採用の離職率で扱っています。

私たちが運営する採用コミットは、株式会社Abeyが提供する月額定額の採用代行です。求人原稿の制作からIndeed・求人ボックス・エンゲージ・Airワーク・ジョブメドレー等の媒体運用、週次レポートまでを担い、応募者への返信・面接・採否の判断は医療機関側に残します。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。何人採用しても月額は変わりません。対応は全国オンラインです。プランの詳細は料金プランのページに掲載しています。

医療機関が採用代行を選ぶときの4つの確認点

  • 1. 募集したい職種の媒体を持っているか看護師・医療技術者はジョブメドレーなどの医療専門媒体、医療事務・受付はIndeedや求人ボックスといった汎用媒体が中心になります。募集職種が複数なら、両方を運用できるかを聞いてください。「医療に強い」という説明ではなく、実際に扱っている媒体名で確認します。
  • 2. 業務範囲と、有料職業紹介の許可の有無どこまでが契約に含まれるかを書面で確認します。応募者への一次連絡が含まれるか、面接の日程調整は誰がやるか。選考の絞り込みまで依頼したい場合は、相手が許可を持っているかが前提条件になります。
  • 3. 費用が採用人数に連動しないか成果報酬型は採れるまで費用が出ませんが、複数職種を同時に募集する医療機関では総額が読めなくなります。定額型なら、看護師と医療事務と受付を同時に募集しても月額は変わりません。年間の採用予定人数で比べてください。
  • 4. 数字が週単位で返ってくるか表示回数・クリック数・応募数が職種別に出てこない場合、原稿の問題か媒体の問題かを切り分けられません。月1回の報告では、掲載費を無駄に使い続けることになります。

加えて、「この職種は媒体で母集団が作れない」と言ってくれるかも判断材料になります。医師や薬剤師は有効求人倍率1.66倍で、そもそも求職者数が少ない職種です。何でも引き受ける会社より、できない範囲を先に伝える会社のほうが、結果として費用は抑えられます。

医療の採用代行についてよくある質問

看護師以外の職種も任せられますか?

任せられます。医療事務、受付、看護助手、医療技術者、歯科衛生士など、求人媒体に掲載できる職種であれば対象です。ただし職種ごとに求人原稿を分ける必要があります。求職者は職種名で検索するため、「スタッフ募集」とまとめると誰にも届きません。

原稿の本数で料金が決まる仕組みの場合、職種数に応じたプランが必要になります。

応募者との面接まで任せられますか?

面接そのものと採否の判断は、医療機関側に残ります。候補者の絞り込みや推薦は職業紹介にあたる場合があり、行うには有料職業紹介事業の許可が必要だからです。

応募者への一次連絡や日程調整については、委託先によって対応範囲が分かれます。採用コミットの場合、この部分は医療機関側にお願いしています。医療職は複数の求人に同時応募するため、当日中の返信ができるかどうかが面接設定率を左右します。院内で即応できる体制を作っておくことが、代行の効果を最大化する条件です。

人材紹介と採用代行、どちらを使うべきですか?

年間の採用人数と職種で決まります。年1名以下、かつ医師・薬剤師のように母集団が小さい職種なら人材紹介のほうが現実的です。看護63万9千円・医師82万4千円という手数料は高額ですが、採用頻度が低ければ年間コストへの影響は限られます。

一方、年2名以上、または複数職種を同時に募集するなら採用代行が有利です。とくに医療事務・受付は一般事務従事者の有効求人倍率が0.29倍(令和8年7月)で、求人1件に対して求職者が3.4人いる状態です。この職種に紹介手数料を払う必要はほとんどありません。

病院とクリニックで、進め方は違いますか?

違います。人事・総務がある病院は、原稿制作と媒体運用だけを部分委託し、要件定義と選考は院内に残す形が合います。この場合、代行会社とやり取りする窓口を1人に決めておくことが条件です。看護部と事務部で要望が分かれると、原稿の修正が止まります。

院長や事務長が兼任しているクリニックは、母集団づくりを全面的に委託し、応募者への返信・面接・採否だけを院内に残す形が現実的です。

どのくらいの期間で応募が集まりますか?

職種と地域によって大きく変わるため、期間や人数を保証することはできません。採用コミットでは契約から最短3日で掲載を始め、そこから反応を見て原稿と出稿先を調整していく流れになります。

有効求人倍率が3.07倍の医療技術者と、0.29倍の医療事務では、母集団が集まる速度がそもそも違います。着手前に「この職種は媒体で母集団が作れるか」を先にお伝えします。難しい場合は、その理由もあわせてお伝えします。

まとめ:医療の採用代行は「どこまで任せるか」を先に決める

医療の採用代行(RPO)で任せられるのは、求人原稿の制作・媒体運用・効果測定までです。応募者への返信・面接・採否の判断は医療機関に残ります。選考の絞り込みまで依頼したい場合は、相手が有料職業紹介事業の許可を持っているかが前提になります。

そして「医療の採用」をひとくくりにしないことが要点です。医療技術者3.07倍・看護師1.94倍に対し、医療事務を含む一般事務従事者は0.29倍。同じ院内で10倍以上の需給差があり、紹介を残すべき職種と、募集すれば集まる職種が分かれています。

さらに、人事がいる病院は部分委託、院長が兼任するクリニックは全面委託と、施設規模でも適した範囲は変わります。委託先を探す前に、院内に何が残るのかを先に決めておくことが、費用と手間の両方を抑える近道です。

採用コミットは、初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なしで運用しています(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。看護師・医療事務・受付を同時に募集しても月額は変わりません。まずはその職種で媒体から母集団が作れるかだけでもお伝えできます。医療機関・クリニックの採用代行サービスの対応範囲もあわせてご覧ください。

応募が止まっている場所を先に特定しておくと、無駄な出稿を避けられます。切り分けの手順は採用が難しい理由と対策|求人を出しても応募が来ない原因の切り分け方にまとめました。

出典

本記事は株式会社Abey(採用代行サービス「採用コミット」運営)が制作しました。有効求人倍率・平均手数料額・離職率の数値は上記の原表を確認したうえで記載し、調査名と時点、確認日を併記しています。有効求人倍率は厚生労働省の職業分類にもとづく区分であり、医療機関の勤務者だけを抜き出した数値ではありません。医療事務・受付は「一般事務従事者」の区分に含まれます。平均手数料額は常用就職(無期雇用または4ヵ月以上の期間を定めて雇用される者)の実績値で、パートを含むため常勤に絞ると金額は上がります。離職率は就職後6ヶ月以内の離職を対象とし、「判明せず」の率は外数です。有料職業紹介事業の許可の要否に関する記載は職業安定法の一般的な整理であり、個別の契約内容についての法的助言ではありません。採用の成立を保証するものではありません。

この記事を書いた人

弓川堅士のアバター 弓川堅士 代表取締役

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長を経て、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。

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