建設業の採用戦略|人手不足のなかで採用する職種と方法の決め方

建設業の採用戦略で最初に決めるべきは、募集媒体でも求人票の書き方でもありません。「どの職種を、どの層から採るか」です。

建設関連職種の有効求人倍率は、定置・建設機械運転従事者の1.67倍から建設躯体工事従事者の7.35倍まで4.4倍の開きがあります。同じ「建設業の採用」でも、職種によって難易度がまったく違います。

この記事では、公的統計から建設業の採用の現在地を確認し、戦略として決めるべき3つの分岐点を整理します。

この記事の要点

建設業の採用戦略で最初に決めるのは、媒体でも求人票でもなく「どの職種を、どの層から採るか」です。就業者は483万人まで減り、55歳以上36.6%・29歳以下11.6%。若手は実数で増えていません。

  • 分岐点① どの職種を採るか有効求人倍率は定置・建設機械運転1.67倍から建設躯体7.35倍まで4.4倍差。
  • 分岐点② 経験者を待つか、育てるか倍率5倍超の職種で経験者だけを待つのは成立しにくい戦略です。
  • 分岐点③ 大手と同じ土俵で戦うか建築技術者の年収差は企業規模で275万円あります。

この3つが決まってはじめて求人票と媒体の話に進めます。順序が逆だと結果は変わりません。

弓川堅士

弓川堅士

株式会社Abey
代表取締役

この記事の監修者

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長として組織づくり・採用業務を担い、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。現場で日々採用に向き合っている実務者の視点から、本記事の内容を監修しています。

目次

建設業の採用戦略は、現在地の数字から決める

建設業就業者数の推移を示す折れ線グラフ。平成9年685万人、平成22年504万人、令和5年483万人
建設業就業者はピーク時から約200万人減っている(国土交通省)

国土交通省の資料によれば、建設業就業者は685万人(平成9年)→ 504万人(平成22年)→ 483万人(令和5年)と推移しています。ピーク時から約200万人減りました。

年齢構成は55歳以上が36.6%、29歳以下が11.6%。さらに実数で見ると、令和4年と比較して55歳以上が5万人増加した一方、29歳以下は増減なしでした。

この数字が意味するのは単純です。業界全体として、若手は増えていません。「若手を採る」という方針を立てても、母集団そのものが増えていない以上、他社から奪うか、業界外から連れてくるかの二択になります。

大手との条件差にどう向き合うかは中小企業の採用コスト|一人当たりの相場と大企業との賃金差で整理しました。

建設業の採用戦略・分岐点①:どの職種を採るか

建設業の採用を一括りにすると戦略になりません。職種別の有効求人倍率を見ると、難易度がまったく違うことがわかります。

建設関連職種の有効求人倍率の棒グラフ。定置・建設機械運転1.67倍、電気工事3.32倍、建設従事者4.13倍、建設・採掘4.81倍、建築土木測量5.65倍、建設躯体7.35倍
定置・建設機械運転の1.67倍から建設躯体の7.35倍まで4.4倍の開きがある(令和8年3月)

電気工事士や電気工事施工管理技士の採用では、企業側の求人条件だけでなく、求職者がどのような求人を比較しているかを把握することも重要です。電気・設備業界の求人動向や募集条件を確認する際は、電気・設備業界専門の転職サイト「ELECAREER」も参考になります。

職種有効求人倍率推定年収戦略上の位置づけ
定置・建設機械運転従事者1.67倍ー建設関連では最も採りやすい
電気工事従事者3.32倍628.1万円年収が高く、手数料も高い
建設従事者(躯体工事を除く)4.13倍ー内装・設備など
建設・採掘従事者(全体)4.81倍ーー
建築・土木・測量技術者(施工管理)5.65倍679.1万円(建築技術者。土木技術者は625.0万円)母集団が薄く、年収も高い
建設躯体工事従事者7.35倍414.5万円求人1件に求職者0.14人

建設躯体工事従事者は7.35倍。求人1件に対して求職者は0.14人しかいません。ここで「経験者を採る」という方針を立てると、統計的にほぼ成立しない戦略になります。

一方で定置・建設機械運転従事者は1.67倍。全職業平均の1.10倍に近く、建設関連では相対的に採りやすい職種です。「この工程を機械化して、採りやすい職種で回せないか」という発想も、採用戦略の一部になります。

建設業の採用戦略・分岐点②:経験者を待つか、育てるか

倍率が5倍を超える職種では、経験者だけを対象にした募集は成立しにくくなります。ここで採る選択肢は3つです。

  • ①未経験を採って育てる母集団は一気に広がります。ただし戦力化までの期間と、教える側の負担を織り込む必要があります。「先輩が現場でつきっきりで教える」体制が作れるかが分岐点です。
  • ②隣接職種から横に採る設備から電気、電気から通信、土木から舗装など。基礎的な現場感覚を持つ層は、まったくの未経験より立ち上がりが早くなります。施工管理なら、職人からの転向や、異業種で工程・納期を管理していた層が該当します。
  • ③シニアを再雇用する・定年を延ばす55歳以上が36.6%を占める業界です。現に働いている層に長く続けてもらうほうが、採用より確実な場合があります。体力面の負担が少ない工程への配置転換とセットで考えます。

いずれを選ぶにしても、決めないまま「経験者募集」を出し続けるのが最もコストがかかります。応募が来ないまま掲載費だけが出ていくためです。

建設業の採用戦略・分岐点③:大手と同じ土俵で戦うか

建築技術者の推定年収を企業規模別に示した棒グラフ。1000人以上860万円、100〜999人659万円、10〜99人585万円
建築技術者の推定年収は、企業規模で275万円の差がある(令和7年賃金構造基本統計調査より当社算出)

建築技術者の推定年収は、従業員1,000人以上で860万円、100〜999人で659万円、10〜99人で585万円。大手と中小で275万円の差があります。

電気工事従事者も、1,000人以上で753万円、10〜99人で546万円と207万円の差があります。賃金だけを並べて比較されたら、中小の建設会社に勝ち目はありません。

したがって戦略としては、賃金の土俵から降りる必要があります。大手が構造的に提供できないものを前面に出します。

  • 転勤がない大手ゼネコンは全国転勤が前提です。地元で働き続けたい層にとって、これは年収差を埋めうる条件になります。
  • 担当できる範囲が広い大手では分業化されている工程を、一人で通して担当できる。技術者としての成長を重視する層に届きます。
  • 決裁が速い資材の手配、人員の配置、現場の判断。稟議を待たずに動けることは、現場の人間にとって実感しやすい価値です。
  • 経営層との距離が近い社長と直接話せる、提案が通る。組織が小さいことの利点です。

これらは求人票に書かなければ伝わりません。「アットホームな職場です」では何も伝わらないので、上記のような具体的な事実として書きます。

同じ現場職では製造業も工程によって難易度が大きく違います。詳しくは製造業の求人に応募が来ない原因|求人倍率の差と求人票の直し方をご覧ください。

建設業の採用で、休日と労働時間は避けて通れない

国土交通省の資料によれば、建設業の年間出勤日数は全産業より多く、総実労働時間も長い水準にあります。休日については技術者・技能者ともに「4週6休程度」が最多で、公共工事のほうが「4週8休(週休2日)以上」の割合が高いという結果でした。

求職者はこの業界特性を知っています。だからこそ、書かない求人はいちばん不利に想像されます。

  • 4週6休なら、そう書く隠しても面接で分かります。書いたうえで、他の条件で釣り合いを取るほうが、応募後の離脱を防げます。
  • 4週8休を実現しているなら、最大の武器になる業界の最多が4週6休である以上、週休2日は明確な差別化要素です。実績として何%の現場で実現できているかまで書きます。
  • 移行中なら、その計画を書く「令和◯年から現場の週休2日を順次導入」といった具体的な計画は、何も書かないより信頼されます。

職種別の相場を数字で確認したい場合は採用単価とは?計算方法と職種別の相場、平均の見方に17職種の一覧をまとめています。

建設業の採用戦略を実行に落とす5つの手順

  • 1. 職種と対象層を1つに決める「建設業の人手不足を解消する」ではなく「◯◯工事の職人を、未経験も含めて年2名」まで絞ります。ここが決まらないと求人票が書けません。
  • 2. 提示条件を同エリアの求人と並べる日給・月給、資格手当、残業と休日出勤の実績。近隣の同業他社の求人を10件並べて、自社がどの位置かを確認します。
  • 3. 求人原稿に事実を書き切る工事の種類、1日の流れ、現場の範囲、社用車と直行直帰、資格取得支援、休日の実績、給与の内訳。書かない項目は不利に想像されます。
  • 4. 無料の窓口から始めるハローワーク、エンゲージ、Airワーク。ここで原稿の精度を上げてから、Indeedや求人ボックスに少額から出稿します。
  • 5. 週次で数字を見て直すクリック数、応募数、面接数。どの段階で落ちているかを見て、原稿か条件かオペレーションかを切り分けます。

応募が来ない原因を、表示・クリック・応募の3段階で切り分ける具体的な手順は建設業の求人に応募が来ない原因|3段階で切り分ける改善方法にまとめています。

この1〜5を現場を回しながら実行するのは、現実には難しいところです。私たちが提供している採用代行は、原稿制作と媒体運用、週次の改善までを月額定額で引き受けるサービスです。応募者への返信・面接・採否の判断は自社に残ります。

この手順を社内で回しきれない場合は建設業の採用代行サービスで代行しています。

造園・外構の会社で庭師・造園作業員を募集する場合は造園・庭師の採用代行で扱っています。

建設業の採用戦略についてよくある質問

建設業で若手を採用したいのですが、どうすればいいですか?

建設業就業者のうち29歳以下は11.6%で、令和4年と比べて実数では増減なしです。業界全体で若手が増えていない以上、他社から移ってもらうか、業界外から連れてくるかになります。

後者を狙うなら、未経験者の受け入れ体制(教える人、期間、資格取得支援)を先に用意してください。それがないまま「未経験歓迎」と書いても定着しません。

大手と賃金で勝負できません。どんな採用戦略が有効ですか?

建築技術者の推定年収は企業規模で275万円、電気工事従事者で207万円の差があります。賃金で並べられたら勝てないので、比較の軸をずらします。

転勤がないこと、担当範囲の広さ、決裁の速さ、経営層との距離。これらを具体的な事実として求人票に書きます。

施工管理が採用できません。戦略をどう変えるべきですか?

建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.65倍(令和8年3月)で、母集団が非常に薄い職種です。経験者だけを待つ運用は統計的に成立しにくくなっています。職人からの転向、設備・電気からの横移動、異業種で工程管理をしていた層まで対象を広げられるかが分岐点です。

詳しくは施工管理の採用単価|紹介手数料の相場204万円と未経験採用という選択で解説しています。

建設業の採用で人材紹介を使うべきですか?

職種によります。建設関連は年収が高いため紹介手数料も高く、電気工事従事者で188万円、施工管理で204万円が目安です(推定年収に料率30%を掛けた試算)。

年1名の採用でも自社募集のほうが総額は安くなる計算ですが、対象を経験者に限定したままだと自社募集でも採れません。対象を広げる判断とセットで考えてください。

まとめ:建設業の採用戦略は、媒体を選ぶ前の3つで決まる

建設業就業者は483万人まで減り、55歳以上が36.6%、29歳以下が11.6%。若手は実数で増えていません。この前提を踏まえて、採用戦略として決めるべきことは3つです。

  • ①どの職種を採るか倍率は1.67倍から7.35倍まで4.4倍の差があります。難易度を知らずに動くと、採れない職種に予算を投じ続けることになります。
  • ②経験者を待つか、育てるか倍率5倍を超える職種で経験者だけを待つのは、統計的に成立しにくい戦略です。
  • ③大手と同じ土俵で戦うか年収差は最大275万円。賃金以外の軸を用意できるかどうかで決まります。

この3つが決まってはじめて、求人票と媒体の話に進めます。逆に言えば、ここが決まらないまま媒体を変えても結果は変わりません。

私たちが運営する採用コミットは、株式会社Abeyが提供する月額定額の採用代行です。求人原稿の制作からIndeed・求人ボックス・エンゲージ・Airワーク等の媒体運用、週次レポートまでを担い、応募者への返信・面接・採否の判断は自社に残ります。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。何人採用しても月額は変わりません。

プランごとの詳細は料金プランのページに掲載しています。まずはその職種と条件で媒体から母集団が作れるかだけでもお伝えできます。難しい職種はその理由もお伝えします。

電気工事士の採用単価と需給の詳細は電気工事士の採用単価|紹介手数料の相場188万円と下げる4つの手順にまとめています。

出典

本記事は株式会社Abey(採用代行サービス「採用コミット」運営)が制作しました。就業者数・年齢構成・休日の状況・有効求人倍率・賃金の数値は上記の原典を確認したうえで記載し、資料名と時点、確認日を併記しています。推定年収(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)、企業規模間の年収差、料率別の手数料額は当社による試算です。有効求人倍率の職業分類は「建設躯体工事従事者」「建築・土木・測量技術者」などの区分であり、特定の工種だけを抜き出した数値ではありません。

この記事を書いた人

弓川堅士のアバター 弓川堅士 代表取締役

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長を経て、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。

目次