中小企業の採用コスト|一人当たりの相場と大企業との賃金差

中小企業の採用コストが大企業より重くなるのは、採用担当がいないからでも、知名度がないからでもありません。同じ職種でも、提示できる年収が違うからです。
営業職の推定年収は、従業員1,000人以上の企業で783万円、10〜99人の企業で552万円。231万円の差があります。同じ求人媒体に並べば、条件で負けます。
ただしこの差は職種によってまったく違います。保育士は14万円、介護職員は32万円しかありません。賃金差が小さい職種では、中小企業でも十分に戦えます。この記事では、自社の職種がどちらなのかを見極めたうえで、採用コストを下げる順番を整理します。
この記事の要点
中小企業の採用コストが重いのは、同じ職種でも提示できる年収が違うからです。ただしその差は職種によって14万円から425万円まで開き、自社がどちらかで打ち手が変わります。
- 賃金で戦えない職種システムコンサルタント425万円、建築技術者275万円、営業231万円。土俵をずらす必要があります。
- 賃金で戦える職種保育士14万円、介護職員32万円、歯科衛生士49万円。規模の差はほぼ効きません。
- 手数料は安いが予算は消える年間の採用予算が150万円なら、紹介1名で7割が消えます。
大企業に構造的に勝てるのは応募への対応の速さです。ここは費用ゼロで改善できます。
中小企業の採用コストは、手法によって0円から200万円超まで分かれる
| 手法 | 1名あたりの費用目安 | 中小企業から見た使いやすさ |
|---|---|---|
| ハローワーク | 0円 | 掲載費ゼロ。地元採用では今も有効 |
| 無料媒体(エンゲージ・Airワーク) | 0円 | 採用ページを無料で作れる。まず整えるべき土台 |
| Indeed・求人ボックス(有料出稿) | 数万〜数十万円 | 少額から始められ、止めるのも自由 |
| 転職サイト(掲載課金型) | 数十万円〜 | 採用できなくても費用が発生する。予算が限られる企業には重い |
| 人材紹介 | 全業種平均103万円 | 決まるまで無料。ただし1名で年間の採用予算を使い切る |
| リファラル(社員紹介) | 数万〜十数万円 | 紹介手当のみ。従業員数が少ないと母数が限られる |
中途採用全体の費用構造は中途採用の費用|一人当たりの相場と職種別の採用単価一覧をご覧ください。
中小企業の採用が難しい本当の理由は、賃金差にある
賃金構造基本統計調査には、企業規模別の賃金が職種ごとに出ています。1,000人以上と10〜99人の推定年収を比べると、職種による違いがはっきりします。

| 職種 | 1,000人以上 | 10〜99人 | 差 |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 1,010万円 | 585万円 | 425万円 |
| 建築技術者 | 860万円 | 585万円 | 275万円 |
| 営業職業従事者(その他) | 783万円 | 552万円 | 231万円 |
| 電気工事従事者 | 753万円 | 546万円 | 207万円 |
| 看護師 | 570万円 | 470万円 | 100万円 |
| 営業用大型貨物自動車運転者 | 544万円 | 468万円 | 76万円 |
| 歯科衛生士 | 439万円 | 390万円 | 49万円 |
| 介護職員 | 400万円 | 368万円 | 32万円 |
| 保育士 | 442万円 | 429万円 | 14万円 |
建築技術者・営業・電気工事は、200万円以上の差があります。この3職種は、賃金だけで比べられたら中小企業に勝ち目はありません。求人票に年収だけを載せて同じ媒体に並べば、求職者は大企業を選びます。
一方で保育士は14万円、介護職員は32万円、歯科衛生士は49万円。これらの職種では、企業規模による賃金差はほとんど意味を持ちません。制度が公定価格に近いことや、事業所規模が小さいことが業界標準であることが背景にあります。
自社の職種がどちらかで、中小企業の打ち手は変わる
- 賃金差が大きい職種(建築・営業・電気工事など)賃金の土俵から降りる必要があります。裁量の大きさ、決裁の速さ、担当できる範囲の広さ、転勤がないこと、経営層との距離。大企業が構造的に提供できないものを前面に出します。
- 賃金差が小さい職種(保育・介護・歯科衛生士など)賃金で戦えます。ただし業界内の他事業所とは横並びなので、差がつくのは労働条件の中身です。配置人数、休憩の取り方、持ち帰り仕事、シフトの融通、有給の取得実績。ここを具体的に書ける事業所が勝ちます。

採用代行を入れるべきかどうかの判断は、採用代行の向き不向き|依頼する前に確認する3つの条件の3つの問いで確認できます。
紹介手数料は中小企業のほうが安い。でも1名で予算が消える
紹介手数料は「理論年収 × 料率」で決まります。中小企業は提示年収が低い分、1名あたりの手数料も下がります。中小企業(10〜99人)の年収に料率30%を掛けると次のようになります。
| 職種 | 中小企業の推定年収 | 料率30%の手数料 | (参考)大企業基準の手数料 |
|---|---|---|---|
| 建築技術者 | 585万円 | 175.5万円 | 258.0万円 |
| 営業職業従事者(その他) | 552万円 | 165.6万円 | 234.9万円 |
| 電気工事従事者 | 546万円 | 163.8万円 | 225.9万円 |
| 看護師 | 470万円 | 141.0万円 | 171.0万円 |
| 保育士 | 429万円 | 128.7万円 | 132.6万円 |
| 介護職員 | 368万円 | 110.4万円 | 120.0万円 |
手数料の額そのものは下がります。ただし中小企業にとっての問題は、絶対額ではなく年間の採用予算に占める割合です。紹介手数料の全業種平均は103万円。年間の採用予算が150万円の会社なら、1名で7割が消えます。
大企業なら年間数千万円の採用予算のなかの1件ですが、中小企業では1名の紹介採用が、その年の採用活動そのものを終わらせてしまうことがあります。
中小企業の採用コストを年間総額で比べると、逆転点は「年2名」
紹介手数料を全業種平均の103万円、自社募集を「採用代行の月額10万円+初期費用10万円+掲載費 月3万円」で1年間続けた場合(合計166万円)で比べます。
| 年間の採用人数 | 人材紹介(103万円×人数) | 自社募集+採用代行(年166万円) | 安いほう |
|---|---|---|---|
| 1名 | 103万円 | 166万円 | 人材紹介 |
| 2名 | 206万円 | 166万円 | 自社募集+採用代行 |
| 3名 | 309万円 | 166万円 | 自社募集+採用代行 |
| 5名 | 515万円 | 166万円 | 自社募集+採用代行 |
逆転点は年2名です。年収の高い建築技術者なら、中小企業の年収水準でも年1名で逆転します(大企業水準の年収で採る場合は営業・電気工事も年1名で逆転)。
ただし自社募集は採用できなくても月額と掲載費が出ていきます。紹介は決まるまで費用が発生しません。年1名の欠員補充で足りている会社なら、紹介のほうが合理的です。
費用の考え方そのものは採用代行の費用相場|料金体系別の目安と一人あたりの採用単価で整理しています。
中小企業が採用コストを下げる順番
- 1. 応募への一次対応を最優先で直す(費用0円・即効)中小企業がいちばん勝てるのがここです。大企業は選考フローが固定されていて、応募から面接まで2週間かかることも珍しくありません。その日のうちに返信し、翌週には面接できる。これは組織が小さいからこそできることで、そのまま採用単価に効きます。
- 2. 求人原稿に条件を書き切る(費用0円)給与の内訳、労働時間の実績、休日日数、業務の範囲、任せる裁量。書かない項目はいちばん不利に想像されます。
- 3. 大企業が書けないことを書く(費用0円)社長との距離、担当できる範囲の広さ、決裁の速さ、転勤がないこと、家庭の事情への融通。賃金差が大きい職種ほど、ここが唯一の武器になります。
- 4. 無料媒体で土台を作る(費用0円)エンゲージやAirワークで採用ページを作り、ハローワークと併用します。ここで原稿の精度を上げてから有料出稿に進みます。
- 5. Indeed・求人ボックスに少額から出稿する(費用の組み替え)月3万〜5万円から始め、クリック単価と応募単価を見て配分を変えます。掲載課金型の転職サイトと違い、成果が出なければ止められます。
- 6. 紹介の使い方を絞る(費用の削減)すべての職種を紹介で採るのをやめ、媒体で母集団が作れる職種は自社募集に切り替えます。有資格・高年収の職種だけ紹介を残す形が現実的です。
この2〜5を社長や総務担当が本業と並行して回すのは、現実には難しいところです。私たちが提供している採用代行は、この原稿制作と媒体運用、週次の改善までを月額定額で引き受けるサービスです。応募者への返信・面接・採否の判断は自社に残ります。
職種ごとの相場を確認したい場合は採用単価とは?計算方法と職種別の相場、平均の見方に17職種の一覧をまとめています。
中小企業での対応範囲と料金は中小企業向けの採用代行サービスにまとめています。
中小企業の採用コストについてよくある質問
中小企業の採用コストは1人あたりいくらが目安ですか?
人材紹介なら常用就職1件あたり全業種平均103万円(厚生労働省・令和6年度)ですが、中小企業は提示年収が低い分これより下がります。中小企業(10〜99人)の年収に料率30%を掛けると、介護職員110万円から建築技術者176万円程度です。
求人広告経由なら掲載費の投じ方で数万円から数十万円、ハローワークや無料媒体は0円です。
中小企業は大企業と賃金で勝てません。どうすればいいですか?
まず自社の職種の賃金差を確認してください。システムコンサルタント・設計者425万円・建築技術者275万円・営業231万円のように差が大きい職種では、賃金の土俵から降りる必要があります。裁量、決裁の速さ、転勤がないこと、経営層との距離といった、大企業が構造的に提供できない条件を前面に出します。
一方で保育士14万円・介護職員32万円のように差が小さい職種なら、賃金でも十分戦えます。
中小企業で採用担当がいません。何から始めるべきですか?
応募への一次対応の体制づくりからです。応募当日に返信できる状態を作ることが、費用をかけずに採用単価を下げる最も確実な方法です。そのうえで無料媒体(エンゲージ・Airワーク)で採用ページを整え、Indeedに少額から出稿します。
無料枠の採用ページを作り込む手順はエンゲージの運用代行にまとめています。
掲載課金型の転職サイトや人材紹介は、この土台ができてからで間に合います。
中小企業は人材紹介をやめたほうがいいですか?
職種によります。媒体で母集団が作れる職種(営業・ドライバー・介護・保育など)は自社募集に切り替え、母集団が薄い有資格職(施工管理・看護師など)は紹介を残すという使い分けが現実的です。
すべてを紹介に任せると、年1〜2名で採用予算を使い切ります。
まとめ:中小企業の採用コストは賃金差の大きさで決める
中小企業(10〜99人)と大企業(1,000人以上)の年収差は、職種によって14万円から425万円まで開きます。建築技術者・営業・電気工事は200万円以上の差があり、賃金だけで比べられたら勝てません。保育士・介護職員・歯科衛生士は差が小さく、賃金でも十分に戦えます。
紹介手数料は年収連動のため中小企業のほうが安く済みますが、年間の採用予算に占める割合で見ると1名で使い切ります。年2名以上を採用するなら、自社で母集団を作れる状態にしたほうが総額は下がります。
そして中小企業が唯一、大企業に構造的に勝てるのが応募への対応の速さです。ここは費用ゼロで改善できます。
私たちが運営する採用コミットは、株式会社Abeyが提供する月額定額の採用代行です。求人原稿の制作からIndeed・求人ボックス・エンゲージ・Airワーク等の媒体運用、週次レポートまでを担い、応募者への返信・面接・採否の判断は自社に残ります。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。何人採用しても月額は変わりません。
プランごとの詳細は料金プランのページに掲載しています。まずはその職種と条件で媒体から母集団が作れるかだけでもお伝えできます。
応募が止まっている場所を先に特定しておくと、無駄な出稿を避けられます。切り分けの手順は採用が難しい理由と対策|求人を出しても応募が来ない原因の切り分け方にまとめました。
出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)第1表(企業規模別)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html)確認日 2026年9月10日
- 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001683019.pdf)確認日 2026年9月10日
- 厚生労働省「地域ブロック別の職種別平均手数料及び離職率について」(令和5年度実績)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/36163_00001.html)確認日 2026年9月10日
- 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第6 手数料(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172486.html)確認日 2026年9月10日
本記事は株式会社Abey(採用代行サービス「採用コミット」運営)が制作しました。賃金・手数料の数値は上記の原表を確認したうえで記載し、調査名と年度、確認日を併記しています。推定年収(きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額)、企業規模間の年収差、料率別の手数料額、年間費用の比較(掲載費を月3万円と仮定)は当社による試算です。企業規模は賃金構造基本統計調査の区分(10〜99人/100〜999人/1,000人以上)によるもので、中小企業基本法上の定義とは異なります。
