経理の採用が難しい理由|応募は来るのに決まらない原因と対策

経理の求人を出しても、応募はあるのに決まらない。面接まで進んでも「思っていた業務と違う」と辞退される。そんな状態が続いていないでしょうか。

経理は「採用が難しい職種」と言われます。ただ、公的なデータを見ると、その難しさの中身は他の職種とはまったく違います。

会計事務の有効求人倍率は0.60倍。求人1件に対して求職者が約1.7人いる計算で、人は余っている側の職種です。

それでも採れないのは、求人票に「どこまでの業務を任せるのか」が書かれていないからです。この記事では、経理の業務を4つのレベルに分けて、応募者と会社の期待をそろえる方法を解説します。

この記事の要点

経理の採用が難しいのは、人がいないからではありません。会計事務の有効求人倍率は0.60倍で、全職業平均1.10倍を大きく下回る「求職者のほうが多い職種」です。

  • それでも決まらない理由求人票が「経理業務全般」「経理経験3年以上」としか書いておらず、応募者と会社の期待がずれるためです。
  • 書くべき2つ日次・月次・年次・管理会計の4段階でどこまで任せるか。そして使用している会計ソフト名。

この2つで応募の質は変わります。

弓川堅士

弓川堅士

株式会社Abey
代表取締役

この記事の監修者

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長として組織づくり・採用業務を担い、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。現場で日々採用に向き合っている実務者の視点から、本記事の内容を監修しています。

目次

経理の採用が難しい、本当の理由

会計事務の有効求人倍率は0.60倍

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」の参考統計表には、職業別の有効求人倍率が掲載されています。

事務系職種の有効求人倍率。会計事務は0.60倍で全職業平均1.10倍を下回ることを示す横棒グラフ
事務系職種の有効求人倍率(令和8年3月・常用(パート含む))。出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」参考統計表

会計事務従事者は0.60倍。全職業平均の1.10倍を大きく下回り、1倍にも届いていません。求人1件あたり、求職者が1.7人ほどいる状態です。

参考までに、建設躯体工事は7.35倍、介護サービスは3.63倍です。経理はこれらとは正反対の側にいます。

つまり、経理の採用における課題は「応募が来ない」ではありません。ここを取り違えると、掲載費を増やしても解決しません。

起きているのは、レベルのミスマッチ

経理の求人で実際に起きているのは、次のような状態です。

  • 応募は来るが、任せたい業務ができない会社は年次決算まで回せる人を求めていた。応募者は仕訳入力の経験しかなかった。求人票に「経理業務全般」としか書いていないため、双方とも面接まで気づけません。
  • できる人が来たが、辞退される応募者は月次決算まで任される前提で応募した。実際は記帳と支払業務が中心だった。キャリアが止まると判断されて辞退されます。
  • 採用したが、すぐ辞める使っている会計ソフトが違う、前職より業務範囲が狭い、想定より属人的だった。入社後に判明すると、短期離職につながります。

いずれも求人票の情報不足が原因です。母数を増やす話ではなく、書く内容を変える話になります。

中小企業は、給与では大企業に届かない

企業規模別の所定内給与額。大企業385.1千円、中企業326.2千円、小企業305.6千円で約8万円の差があることを示す棒グラフ
企業規模別の賃金(令和7年・一般労働者・男女計)。出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概要

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、賃金(令和7年6月分の所定内給与額の平均)は大企業385.1千円、中企業326.2千円、小企業305.6千円でした。

大企業と小企業の差は月あたり約8万円。この差を埋めようとしても、中小企業には限界があります。

ただし経理という職種は、給与以外で勝てる項目が多い職種でもあります。業務範囲の広さ、決算まで任される経験、在宅勤務のしやすさ、残業の少なさ。大企業では細分化されて経験できないことが、中小企業では任せられます。

そこを書いていない求人が、圧倒的に多いのが実情です。

中小企業が大手とどこで差がつくかは中小企業の採用コスト|一人当たりの相場と大企業との賃金差をご覧ください。

経理の求人票に、任せる範囲を書く

経理の採用で決め手になるのは、求人票に「どこまでの業務を任せるのか」を書けているかどうかです。まず自社の求める範囲を言語化するところから始めます。

経理の仕事を4つのレベルに分解する

経理の採用でまずやるべきなのは、自社が誰に何を任せたいのかを、自分たちで言語化することです。

経理業務を日次・月次・年次・管理会計の4レベルに分解した図。記帳から予実管理までの業務範囲
経理業務の4段階。求人票にどこまで任せるかを書くと、応募者と会社の期待がそろう
  1. レベル1|日次業務記帳・仕訳入力、入出金の管理、経費精算、請求書の発行、支払業務。未経験や簿記3級からでも入りやすい範囲で、パートでも任せられます。
  2. レベル2|月次業務月次決算、試算表の作成、売掛・買掛の管理、給与計算、社会保険の手続き。実務経験1〜3年程度が目安で、中小企業の求人でもっとも需要が集中する層です。
  3. レベル3|年次業務年次決算、税務申告の資料作成、顧問税理士との窓口、償却資産の申告、監査対応。ここまで任せるなら、実務経験と相応の給与が必要になります。
  4. レベル4|管理会計・財務予実管理、資金繰り表の作成、銀行との折衝、原価計算、経営数値の報告。経理というより経営管理の領域で、人数もかなり限られます。

この4段階のうち、自社がどこを任せたいのか。どこは他の人や税理士が担当するのか。これを決めてから求人票を書いてください。

会計事務所の側で担当者を採用する場合は、求める資格や経験のレベル分けを含めて税理士事務所の採用代行でご案内しています。

多くの会社は「レベル2まで任せたい」のに、求人票では「経理業務全般」と書き、応募資格に「経理経験3年以上」と書いています。これではレベル3〜4の人が「物足りない」と判断し、レベル1の人が「無理だ」と諦めます。結果として、狙った層だけが応募しません。

「経理経験3年以上」が機能しない理由

経理の求人でもっとも多い応募資格が「経理経験3年以上」です。しかし、この条件はほとんど機能していません。

理由は単純で、同じ「経理3年」でも、経験している業務がまったく違うからです。

  • 大企業で3年売掛金の消込だけを3年、というケースがあります。業務が細分化されているため、決算は経験していないことも珍しくありません。
  • 小規模企業で3年記帳から決算、給与計算、社会保険まで1人で回していた、というケースです。範囲は広いですが、我流になっている場合もあります。
  • 会計事務所で3年複数社の記帳と決算を経験しているため、処理は速いです。ただし事業会社側の管理業務は未経験ということもあります。

年数ではなく、「何ができるか」で書いてください。「仕訳入力の実務経験1年以上」「月次決算を担当した経験」「顧問税理士とのやり取りを担当した経験」。このほうが、応募者も自己判断ができます。

そして必須条件は1〜2個に絞り、残りは歓迎条件に落としてください。条件を積み上げると、該当者は急速に減ります。

経理の求人票に、会計ソフト名は必ず書く

意外に思われるかもしれませんが、経理の求職者がもっとも気にする項目のひとつが「どの会計ソフトを使っているか」です。

クラウド会計(マネーフォワード、freee)と、インストール型(弥生会計、勘定奉行、PCA)では、日々の作業手順が大きく変わります。経験のあるソフトなら初日から動けますし、未経験のソフトなら習得の時間が要ります。

  • 使用しているソフト名を書く「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計」など、製品名で書いてください。「会計ソフト」だけでは判断できません。
  • 周辺のツールも書く経費精算、請求書発行、給与計算、勤怠管理。何を使っているかで、業務の効率化がどこまで進んでいるかが伝わります。
  • 紙とExcelが残っているなら、正直に書く隠しても入社後に分かります。「現在クラウド化を進めている段階です」と書けば、改善に関わりたい人には逆に魅力になります。

クラウド会計を導入している中小企業は、それだけで「業務が整理されている会社」という印象を与えられます。書かないのは損です。

経理の求人票に必ず書く項目

項目書き方の要点
職種名「経理(月次決算まで/簿記3級可)/〇〇駅 徒歩5分」。任せる範囲を職種名に入れる
業務範囲日次・月次・年次のどこまでか。年次決算と申告を税理士が担当するなら明記する
給与上限まで。「年次決算まで対応可なら30万円〜」のように、金額の幅と条件をセットで
応募資格年数ではなく、できる業務で書く。必須と歓迎を分ける
使用ソフト会計ソフトの製品名。経費精算・給与計算のツールも
体制経理の人数、年齢層、前任者の引継期間の有無、上長は誰か
繁忙期決算期はいつか、そのときの残業実績。隠すと入社後に不信につながる
働き方在宅勤務の可否と頻度、時短の可否、フレックスの有無
今後の展望クラウド化を進めたい、管理会計を強化したいなど。成長意欲のある人に効く

とくに「前任者の引継期間」は、経理の求職者が強く気にする項目です。前任者がすでに退職していて引継ぎゼロなのか、3ヶ月重なるのかで、応募の判断は変わります。

応募が決まる経理の求人票と、決まらない求人票を比べる

経理の求人票の比較。職種名・給与・応募資格・仕事内容・使用ソフト・体制の書き方の違い
同じ会社・同じ条件でも、書き方だけで届く相手が変わる(記載例)

左右で条件は変えていません。会社がすでに持っている情報を書いたかどうかの違いだけです。

右側の求人には、応募者が知りたい情報が全部入っています。どこまで任されるのか、簿記は何級が必要か、どのソフトを使うのか、引継ぎはあるのか。ここまで書くと、条件が合う人だけが応募してきます。

応募数は減るかもしれません。ですが経理は求職者のほうが多い職種です。減らして構いません。決まる確率のほうが重要です。

求人票をどう書けばいいか分からないときは

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経理の募集条件をどう決めるか

任せる範囲が決まったら、次は給与と応募資格です。ここを業務レベルと連動させると、応募と会社の期待がそろいます。

経理の給与はどう決めるか

経理の給与は、任せる業務レベルと連動させるのが基本です。全国平均や「事務職の相場」で決めると、実態と合わなくなります。

  1. まず商圏内の同レベル求人を10件見るIndeedやハローワークインターネットサービスで「経理 〇〇市」と検索し、業務範囲が近い求人の給与を書き出します。全国平均ではなく、これが比較対象です。
  2. レベルごとに給与の幅を決める「月次決算まで:23〜28万円」「年次決算まで:28〜35万円」のように段階をつけます。求人票にもこの形で書けます。
  3. 幅の上限まで書く「23万円〜」だけだと、23万円しか出ない求人として扱われます。上限と、そこに届く条件を書いてください。
  4. 給与で勝てない分を、別の項目で埋める在宅勤務、時短、残業の少なさ、任される範囲の広さ。経理はこれらが効きやすい職種です。

なお、パートで募集する場合は時給も併記してください。経理は時短・パート希望者が多く、時給表記があるだけで対象が広がります。

経理採用で、日商簿記の資格をどう扱うか

経理の求人では、応募資格に「日商簿記2級以上」と書かれていることがよくあります。ここは慎重に判断してください。

  • 2級を必須にすると、母数が大きく減る実務ができても資格を取っていない人はいます。逆に、2級を持っていても実務未経験の人もいます。資格と実務能力は別物です。
  • レベル1〜2なら3級で足りることが多い記帳・仕訳入力・月次決算までなら、3級の知識と実務経験の組み合わせで回せます。必須は3級、2級は歓迎条件にするほうが現実的です。
  • レベル3以上なら2級が目安になる年次決算や税務申告の資料作成まで任せるなら、2級相当の知識は必要です。ここは必須にしても問題ありません。
  • 資格取得の支援を書くと効く「簿記2級の受験費用を会社が負担」「合格時に資格手当」。3級保有者が応募しやすくなり、定着にもつながります。

資格要件をひとつ下げるだけで、応募できる人の数は大きく変わります。本当にその級が必要かを、業務レベルに照らして判断してください。

経理の応募者を増やす、ターゲットの広げ方3つ

経理は、対象を広げる余地が大きい職種です。給与を上げずに母数を増やせます。

  1. 時短・パートの枠を作る経理は業務量が月内で波打つ職種です。繁忙日だけ人手が必要なら、週3日や1日5時間の枠でも回せます。正社員1名を待つより早く体制が整います。
  2. 在宅勤務を認めるクラウド会計を使っているなら、経理は在宅と相性の良い職種です。週1〜2日の在宅を認めるだけで、通勤圏の外まで対象が広がります。
  3. 会計事務所の経験者に目を向ける会計事務所で記帳・決算を経験した人は、処理が速く知識も体系的です。事業会社への転職を考えている層は一定数います。求人票に「会計事務所出身の方も歓迎」と書くだけで届きます。

この3つは、いずれも条件を上げずにできることです。中小企業ほど効果が出ます。

経理の求人をどこに出し、いくらかかるか

経理は求職者のほうが多い職種のため、媒体と費用のかけ方も他の職種とは変わります。

経理の求人は、どの媒体に出すか

媒体掲載費向いている使い方
Indeed無料掲載可/有料出稿で露出増母数が最大。パート・時短の経理希望者にも届く
求人ボックス無料掲載可/有料出稿ありIndeedと併用。クリック単価を比較して配分
ハローワーク無料地元志向・パート希望者。まず出しておく
エンゲージ・Airワーク無料採用ページを無料で作り、Indeed等へ連携
大手転職サイト数十万円〜の掲載課金レベル3以上の正社員採用。母集団の質は上がる
管理部門特化の転職サービス成功報酬が中心経理・財務の経験者に絞って届く。単価は高い

レベル1〜2ならIndeedとハローワークで十分に集まります。むしろ応募が多すぎて選別が大変になることのほうが多い職種です。

レベル3以上を狙う場合だけ、有料媒体や紹介サービスを検討してください。ここは母数が少なく、待っていても来ません。

経理の採用にいくらかかるか

手段1名あたりの費用目安特徴
ハローワーク・無料媒体0円レベル1〜2なら現実的に採用できる
Indeed・求人ボックス(有料出稿)数万〜数十万円原稿の精度で大きく変動。経理は比較的集まりやすい
大手転職サイト数十万〜100万円超掲載課金のため、採用0でも費用は発生する
人材紹介・管理部門特化サービス年収の30〜35%年収450万円なら135〜158万円。決まるまで0円

経理は求職者が多い職種なので、レベル1〜2の採用に人材紹介を使うのは費用対効果が悪くなりがちです。無料媒体と原稿の改善で十分に到達できます。

費用の考え方は採用代行の費用相場|料金体系別の目安と一人あたりの採用単価で整理しています。

経理の採用を、いつ始めて誰がどう見極めるか

経理は引き継ぎに時間がかかる職種です。スケジュールの逆算と、実務レベルの見極め方を整理します。

経理の募集開始から入社までのスケジュール

経理は、前任者の退職が決まってから動き出す会社がほとんどです。しかしそれでは間に合いません。逆算しておく必要があります。

時期やること
入社の4〜5ヶ月前現任者の業務を一覧化。任せるレベル(日次/月次/年次)と給与の幅を決める
3〜4ヶ月前求人原稿を作成。会計ソフト名・体制・引継期間を明記して掲載開始
2〜3ヶ月前応募対応・面接。2週間ごとに数字を見て、職種名と応募資格を1か所ずつ直す
1.5〜2ヶ月前内定。在職中の方は退職に1〜2ヶ月かかる前提で調整する
入社後1〜3ヶ月引継ぎ期間。可能なら決算期を1度一緒に経験してもらう

ポイントは「決算期をまたいで引き継げるか」です。年次決算は1年に1度しか発生しないため、手順書だけでは伝わりきりません。

どうしても間に合わない場合は、前任者に決算期だけスポットで関わってもらえないかを退職前に相談しておいてください。退職後に依頼するより、はるかに話が通りやすくなります。

また、決算期の直前に入社してもらうスケジュールは避けたほうが無難です。もっとも負荷の高い時期に、業務を覚えながら回すことになります。

経理の面接で、実務レベルをどう確認するか

経理の面接でもっとも難しいのが、本当にできるかどうかの見極めです。とくに社内に経理に詳しい人がいない場合、判断がつきません。

次の質問を用意しておくと、経歴書だけでは分からない実務レベルが見えます。

  1. 「月次決算は何日で締めていましたか」締め日と、そこまでの手順を聞きます。実際に回していた人なら具体的に答えられます。日数は会社の規模や体制で変わるため、数字そのものより手順を説明できるかを見てください。
  2. 「担当していた業務を、日次・月次・年次で分けて教えてください」自分の業務範囲を整理して話せるかどうかで、経験の深さが分かります。
  3. 「使っていた会計ソフトと、その中で苦労した点は」ソフト名だけでなく、運用上の課題まで話せる人は実務を回しています。
  4. 「顧問税理士とはどんなやり取りをしていましたか」窓口を担当していたかどうかが分かります。レベル3を任せたい場合は重要です。
  5. 「前任者からの引継ぎはどうでしたか」引継ぎがない状況を経験している人は、自社でも同じ状況に対応できる可能性があります。

社内で判断できない場合は、顧問税理士に面接へ同席してもらうのもひとつの方法です。実務レベルの確認は、専門家のほうが正確です。

なお、面接では適性と能力に関係のない事項を尋ねないよう注意してください。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、本籍・出生地、家族に関すること、住宅状況、宗教や支持政党といった事項の把握は就職差別につながるおそれがあるとしています。あらかじめ質問項目を決めておくと、この事故を防げます。

経理の退職リスクと、採用以外の選択肢

経理は1人体制の会社が多く、辞められると業務が止まります。採用活動と並行して手を打っておくべきことをまとめます。

経理担当者が辞めると、何が止まるか

経理の採用を考えるとき、多くの会社はすでに人が辞めることが決まってから動き始めます。これが最大のリスクです。

経理は1人体制の会社が多く、その1人が抜けると次のことが同時に起きます。

  • 支払いと入金の確認が止まる取引先への支払い遅延は、信用に直結します。振込データの作成方法も、担当者しか知らないことがあります。
  • 給与計算ができなくなる社会保険や税額の処理を含め、毎月必ず発生する業務です。止められません。
  • 月次の数字が見えなくなる試算表が出なくなると、経営判断の材料がなくなります。銀行への報告が必要な場合はさらに深刻です。
  • 決算・申告に影響が出る顧問税理士がいても、資料を渡す人がいなければ進みません。決算期が近いほど影響は大きくなります。
  • ソフトやシステムに誰も入れなくなる会計ソフトやネットバンキングのIDと権限が担当者に集中していると、退職後にアクセスできなくなることがあります。

そして、経理の採用には募集から入社まで3〜4ヶ月かかります。在職中の人は退職に1〜2ヶ月かかるためです。

退職の申し出を受けてから動き始めると、ほぼ確実に引継ぎ期間が足りません。

経理の属人化を、採用より先に解いておく

採用の前に、いま在籍している経理担当者の業務を可視化しておいてください。これは採用活動そのものより優先度が高い作業です。

  1. 業務の一覧を作る日次・月次・年次で、いつ何をしているかを書き出してもらいます。1〜2時間で作れます。求人票を書くときの材料にもなります。
  2. 手順書を残すとくに月に一度しか発生しない業務は、手順が残っていないと引き継げません。画面のスクリーンショットを貼るだけでも十分です。
  3. IDと権限を会社側で管理する会計ソフト、ネットバンキング、各種サービスのアカウント。管理者権限は必ず経営側が持ってください。
  4. 顧問税理士との窓口を複数にする担当者1人だけがやり取りしている状態は危険です。経営者もメールのやり取りに入っておいてください。
  5. 使えるツールを増やしておくクラウド会計や経費精算ツールを導入しておくと、引継ぎのコストが下がり、採用のハードルも下がります。

この作業をしておくと、求人票に書ける情報が一気に増えます。「業務範囲は一覧で提示できます」「手順書があります」と書ける会社は、経理の求職者から見て安心材料になります。

採用した経理担当者に、定着してもらうために

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」では、転職した人が前職を辞めた理由の上位に、給料、職場の人間関係、労働時間・休日等の労働条件が並んでいます(定年・契約期間の満了、会社都合を除く)。

経理の場合、これに加えてこの職種特有の辞める理由があります。

  1. 決算期の負荷が1人に集中する年に数回、明らかに業務量が跳ね上がります。そのたびに残業が続くと、他の時期がどれだけ穏やかでも消耗します。繁忙期だけパートや派遣で人を足す設計にしておいてください。
  2. 1人体制で相談相手がいない判断に迷ったときに聞ける人が社内にいない状態は、精神的な負担が大きくなります。顧問税理士に気軽に質問できる体制を作っておくだけで変わります。
  3. 任される範囲が広がらないずっと記帳と支払だけでは、キャリアが止まると感じます。月次決算、年次決算、管理会計へと段階的に任せる道筋を示してください。
  4. 成果が評価されにくい経理は「ミスがないこと」が当たり前とされ、評価されにくい職種です。締めが早くなった、月次が安定した、コストを削減した。数字で言語化して伝えてください。
  5. 業務改善の提案が通らないクラウド化やツール導入の提案が却下され続けると、意欲は下がります。すぐに導入できなくても、判断の理由は必ず説明してください。

そして定着した実績は、そのまま次の求人票に書ける材料になります。「経理の平均勤続7年」「決算期は派遣を1名増員」と書ける会社は、それだけで選ばれやすくなります。

経理は採用以外の選択肢も検討する

経理は、必ずしも自社で人を抱える必要がない業務でもあります。採用と並行して、次の選択肢も検討する価値があります。

選択肢向いているケース注意点
記帳代行レベル1の業務量が多く、社内で回らない社内に数字が残りにくい。証憑のやり取りの手間は残る
クラウド化・自動化手入力の作業が多く残っている導入時の設定に手間がかかる。移行期は業務が増える
派遣繁忙期だけ、決算期だけ人手がほしい継続的な業務の蓄積は残りにくい
時短・パートの複数名体制正社員1名が採れない/属人化を避けたい業務の分担設計が必要になる

なお、決算や税務申告そのものは税理士の業務範囲です。記帳代行サービスを利用する場合も、どこまでを依頼できるかは顧問税理士に確認してください。

目的は「経理担当者を1名採ること」ではなく、「経理業務が滞りなく回ること」です。手段は複数あります。

同じ「採用が難しい」でも、営業職は経理とは正反対の構造です。求人のほうが求職者より多く、母数そのものが足りません。営業の採用が難しい理由|応募が来ない求人票の共通点と書き方で解説しています。

それでも経理が採用できないときは

求人票を直しても決まらない場合、原因は限られています。数字で切り分けてから次の手を打ってください。

求人を直したあと、何を見て判断するか

求人票を直したあと、感覚で判断すると打ち手が続きません。経理の場合、見るべき数字は少し特殊です。

見る数字読み取ること判断の目安
表示回数職種名に検索語が入っているか前週比で動いているか
応募数条件で絞りすぎていないか経理は集まりやすい職種。0が続くなら応募資格を疑う
応募者の経験レベル狙った層に届いているかずれているなら職種名と業務範囲の書き方
面接設定率返信速度と日程調整5割を下回るなら社内の対応
辞退の理由業務範囲・給与・体制のどこがネックか2件続いたら求人票を直す

経理でとくに重要なのが「応募者の経験レベル」です。応募数が十分でも、狙ったレベルの人が来ていないなら、原因は母数ではなく書き方にあります。

また、辞退の理由は必ず記録してください。「業務範囲が想定より狭かった」「在宅が使えないと分かった」。同じ理由が2件続いたら、それは求人票に書いていない情報です。

変更は1回につき1か所、判断の期間は2週間を目安にしてください。同時に複数を変えると、何が効いたのか分からなくなります。

それでも経理を採用できない場合の3つの原因

  1. 任せたい業務レベルと、提示している給与が合っていない年次決算まで求めているのに月給23万円では、該当者は応募しません。レベルを下げるか、給与を上げるかの二択です。商圏内の同レベル求人と並べれば判断できます。
  2. 必須条件を積み上げすぎている「経験3年以上・簿記2級以上・特定ソフト経験必須・フルタイム週5日」。ひとつずつは妥当でも、重ねると該当者はほぼいなくなります。必須は1〜2個に絞ってください。
  3. 応募への返信が遅い経理の求職者も複数社に応募しています。数日後の返信では、先に返事をくれた会社に決まっています。当日中の一次返信を基準にしてください。

職種を問わない共通の切り分け方は、採用が難しい理由と対策|求人を出しても応募が来ない原因の切り分け方で解説しています。表示回数・クリック・応募数の3つで、どこが詰まっているかを判定できます。

自社で回せないときは、採用代行という選択肢がある

ここまでの内容は、すべて自社で実行できます。ただ、業務範囲を整理して求人票に落とし、毎週数字を見て直し続けるのは、専任者のいない会社には負担が大きい作業です。

採用代行(RPO)は、この「原稿を作り、掲載し、数字を見て直し続ける」部分を外に出すサービスです。

  • 向いているケース採用の専任者がいない。経理担当者の退職が決まっていて時間がない。任せたい業務範囲をうまく言語化できない。複数の職種を同時に募集している。
  • 向いていないケース任せたいレベルに対して給与が明確に低い(条件の見直しが先)。年に1名採用するかどうか(月額の固定費が割高になる)。応募者への返信を社内で回せない(母集団形成型の代行では、応募後の対応は自社に残ります)。

採用代行の業務範囲、人材紹介との違い、会社の選び方は採用代行(RPO)とは?業務内容と費用相場、人材紹介との違いで整理しています。

経理を含む管理部門の募集を任せる場合の対応範囲は管理部門(人事・経理・総務)の採用代行サービスにまとめています。

よくある質問

経理の採用にはどのくらい期間がかかりますか?

募集開始から入社まで、3〜4ヶ月を見込んでください。掲載から応募が集まるまでに1ヶ月、選考に1ヶ月、在職中の方の退職に1〜2ヶ月かかります。

引継ぎ期間を確保したいなら、さらに前倒しが必要です。前任者の退職が決まってから動くと、まず間に合いません。

未経験者を経理として採用できますか?

レベル1の日次業務であれば可能です。記帳・仕訳入力・経費精算・支払業務は、簿記3級の知識と教育があれば任せられます。

ただし教える人が社内にいることが条件です。1人体制の会社に未経験者を採用すると、双方が苦しくなります。経験者と未経験者を組み合わせる体制が現実的です。

パートの経理でも決算まで任せられますか?

業務量と勤務日数の設計次第で可能です。会計事務所出身者や、以前フルタイムで経理をしていた人が、育児などを理由にパートを探しているケースは少なくありません。

決算期だけ勤務日数を増やせるかを事前に相談しておくと、繁忙期の対応がしやすくなります。求人票にもその旨を書いてください。

経理経験者が応募してこないのですが

まず職種名を確認してください。「経理事務」だけでは、求職者が検索する「経理 〇〇市」「経理 パート」「経理 在宅」といった言葉に引っかかりません。

次に応募資格です。「経験3年以上・簿記2級以上」で絞っていないか。この2つを外すだけで応募が動くケースは多くあります。

在宅勤務を認めると、管理が難しくなりませんか?

クラウド会計を使っていれば、日次・月次の業務は在宅でも回せます。実際に週1〜2日の在宅を認めている中小企業は増えています。

紙の証憑のやり取りや押印が残っている場合は、そこだけ出社日にまとめる運用にします。全部を在宅にする必要はありません。週1日でも、応募者にとっては大きな差です。

前任者が退職済みで、引継ぎができません

その状況は求人票に正直に書いてください。隠して採用しても、入社直後に判明して早期離職につながります。

あわせて、顧問税理士がどこまでフォローするか、手順書はどこまであるかを書いてください。「引継ぎはありませんが、税理士事務所が3ヶ月サポートに入ります」と書けるだけで、応募のハードルは下がります。

まとめ:経理の採用は母数ではなく、書き方の問題

経理の採用が難しいのは事実です。ただし、その理由は他の職種とはまったく違います。

会計事務の有効求人倍率は0.60倍。全職業平均1.10倍を大きく下回り、求職者のほうが多い職種です。建設や介護のように「人がいない」わけではありません。

起きているのはレベルのミスマッチです。求人票が「経理業務全般」「経理経験3年以上」としか書いていないため、応募者も会社も面接まで判断できません。

やることは3つです。経理の仕事を日次・月次・年次・管理会計の4段階に分け、どこまで任せるかを書く。会計ソフトの製品名を書く。応募資格を年数ではなく、できる業務で書く。いずれも会社がすでに持っている情報です。

そして経理は、辞められたときに業務が止まる職種です。採用活動と並行して、業務の可視化とIDの管理だけは先に進めておいてください。

私たちが運営する採用コミットは、この「任せたい範囲を言語化して原稿にし、掲載して、数字を見て直し続ける」部分を引き受ける月額定額の採用代行です。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。応募者への返信・面接・採否の判断はお客様側に残ります。

ただし、任せたいレベルに対して給与が明確に低い場合は、代行を入れても決まりません。そのときは「まず条件かレベルを見直したほうがよい」と正直にお伝えします。いまの求人を見せていただければ、どこがずれているのかだけでも判断できます。

職種ごとの採用単価の相場は採用単価とは?計算方法と職種別の相場、平均の見方に一覧化しています。

出典

本記事は株式会社Abey(採用代行サービス「採用コミット」運営)が制作しました。統計値は上記出典の公表値をそのまま引用し、確認日を併記しています。求人票の改善に関する記述は当社の実務経験に基づくもので、応募数の増加や採用成立を保証するものではありません。税務・会計業務の範囲や法令の適用については、顧問税理士・社会保険労務士等にご確認ください。

この記事を書いた人

弓川堅士のアバター 弓川堅士 代表取締役

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長を経て、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。

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