歯科衛生士の採用が難しい理由|復職者に届く求人票の書き方

歯科衛生士の求人を出しても、まったく応募が来ない。人材紹介に頼ると年収の3割前後の手数料がかかる。院長がひとりで悩んでいる歯科医院は少なくありません。

ただ、「歯科衛生士が足りない」という前提そのものを一度疑ってみる必要があります。

厚生労働省のデータでは、歯科衛生士の免許登録者は314,143人。そのうち働いているのは145,183人で、就業割合は46.2%です。つまり免許を持ちながら働いていない人のほうが多い状態です。

この記事の要点

歯科衛生士の採用が難しいのは、人がいないからではありません。免許登録者314,143人に対し就業者は145,183人、就業割合46.2%。約17万人が資格を持ちながら働いていません。

  • 背景就業者の99%が女性で、ライフイベントによる離職が多いことがあります。
  • 狙うべき層転職市場の現役だけではなく、復職を考えている層です。
  • 先回りすべき4つの不安ブランク、勤務時間、技術、人間関係。

この4つに求人票で答えられているかが、応募が来るかどうかを分けます。

弓川堅士

弓川堅士

株式会社Abey
代表取締役

この記事の監修者

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長として組織づくり・採用業務を担い、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。現場で日々採用に向き合っている実務者の視点から、本記事の内容を監修しています。

目次

歯科衛生士の採用が難しい本当の理由

免許保有者の半数以上が働いていない

厚生労働省の「歯科衛生士の現状と今後の検討の進め方について」(歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会)に、決定的な数字があります。

歯科衛生士の免許登録者314,143人に対し就業者は145,183人、就業割合46.2%であることを示す図
歯科衛生士の免許登録者と就業者(令和4年)。出典:厚生労働省「歯科衛生士の現状と今後の検討の進め方について」

令和4年の免許登録者数は314,143人。そのうち就業しているのは145,183人で、就業割合は46.2%です。

差し引き約16万9千人が、資格を持ちながら歯科衛生士として働いていません。就業者の数より、働いていない人の数のほうが多い計算です。

同資料は、この状況について「ライフイベント等による離職者数が多く、復職支援や人材確保対策は喫緊の課題」と記しています。

就業者数そのものは増え続けている

就業歯科衛生士数が平成16年79,695人から令和4年145,183人へ増加していることを示すグラフ
就業歯科衛生士数の年次推移。出典:厚生労働省「歯科衛生士の現状と今後の検討の進め方について」(原典:衛生行政報告例)

意外に思われるかもしれませんが、就業歯科衛生士数は減っていません。平成16年の79,695人から令和4年の145,183人まで、一貫して増加しています。

それでも現場で採りにくいのは、需要の伸びが供給を上回っているためです。高齢化により訪問診療や口腔健康管理のニーズが増え、1医院あたりに必要な人数が増えています。

なお同資料は、「歯科衛生士が足りない」という意見はあるが、需給の検討や必要数の分析は十分に行われていないとも記しています。国としても実態の把握が途上という段階です。

押さえておくべき3つの前提

  • 就業者の99%が女性結婚・出産・育児・配偶者の転勤といったライフイベントが、そのまま離職につながる構造です。裏を返せば、その制約に対応できる条件を用意できる医院が有利になります。
  • 就業先の約90%が歯科診療所病院は約5%。つまり求職者にとっての選択肢は、ほぼ他の歯科医院です。同じ商圏の医院と直接比較されます。
  • 1医院あたりの歯科衛生士数の平均は約2.0人常勤換算の平均で、少人数の職場です(令和5年医療施設調査)。だからこそ、人間関係と院長の方針が転職の判断に強く影響します。就業歯科衛生士数には都道府県間の地域差があると、厚生労働省の資料も指摘しています。

同じ医療系の職種では看護師の採用代行、介護分野では介護職の採用が難しい理由もあわせてご覧ください。

歯科衛生士の採用で狙うべきは「復職を考えている層」

現役で働いている14.5万人を、同じ商圏の歯科医院で奪い合う。これがほとんどの医院がやっていることです。

一方、資格を持ちながら働いていない約17万人には、ほとんどの求人が届いていません。ここが最大の空白地帯です。

復職をためらう理由は、大きく4つに整理できます。求人票でこの4つに先回りして答えると、それだけで応募の母数が変わります。

歯科衛生士が復職をためらう4つの不安(ブランク・勤務時間・技術・人間関係)と、それぞれに求人票で答える方法
復職をためらう4つの不安に、求人票で先回りする
  • ブランクへの不安「5年ぶりでも大丈夫です」と書くだけでは足りません。実際に復職者が在籍していること、その人が何年ぶりに復帰したか、最初の1ヶ月をどう過ごすかを具体的に書いてください。「ブランク可」の3文字と、この情報では応募数が変わります。
  • 勤務時間の制約週2日から、1日4時間から、15時まで、学校行事で休める。子育て中の歯科衛生士にとっては、給与よりこちらが優先されます。フルタイム前提の求人しか出していないなら、時短枠を別の求人として出してください。
  • 技術への不安離れている間に器材も術式も変わっています。使用しているスケーラーやユニット、院内研修や勉強会の有無、先輩がつく期間を書きます。「教えてもらえる環境がある」ことが伝われば、不安は下がります。
  • 人間関係の不安1医院あたり平均約2.0人という少人数の職場です。スタッフの人数、年齢層、平均勤続年数を書いてください。勤続年数が長いことは、それだけで働きやすさの証明になります。

この4つは、いずれも医院の条件を変えずに書けることです。すでに満たしているのに書いていない医院がほとんどです。

歯科衛生士の採用では、応募を集めるための求人票の改善に加え、入職後に長く働ける職場環境を整えることも重要です。歯科衛生士・歯科助手の採用と定着、教育体制や人件費の見直しについては、「歯科衛生士・歯科助手の採用と定着|人手不足対策」も参考になります。

歯科衛生士に届く求人票の書き方

狙う層が決まったら、次は求人票です。応募が来ない歯科医院に共通する書き方と、その直し方を見ていきます。

応募が来ない歯科医院の求人票に共通すること

歯科衛生士の求人票の書き方の比較。職種名・給与・勤務時間・仕事内容・職場体制を具体的に書いた場合との違い
同じ医院でも、書き方だけで見え方が変わる(記載例)
  1. 職種名が「歯科衛生士」だけこれでは現役の転職者しか自分ごとにできません。「歯科衛生士(ブランク可・週2日〜)/〇〇駅徒歩3分」のように、対象と通勤条件を職種名に入れると、検索にも引っかかり、復職層にも届きます。
  2. 給与が「月給25万円〜」だけ歯科衛生士の求職者は給与を強く見ます。上限まで書き、経験による加算があるならその条件も明記してください。パート希望者向けに時給も併記すると、対象が広がります。
  3. 勤務時間がフルタイムのみ復職層の大半は時間の制約があります。時短が可能なら必ず書き、可能なら時短枠を別求人として出してください。1本の求人で両方を狙うと、どちらにも刺さりません。
  4. 仕事内容が「歯科衛生士業務全般」SRP中心なのか、TBIやメンテナンス中心なのか、アシスタント業務がどれくらいあるのか。1日に何名担当するのか。ここで働き方のイメージが決まります。
  5. 職場の体制が書かれていないユニット台数、DHの人数と年齢層、平均勤続年数、院長の診療方針。少人数の職場だからこそ、ここがもっとも知りたい情報です。

求人票を直しても応募が来ないときは

採用コミットは、求人原稿の制作からIndeed・ジョブメドレー等の媒体運用・週次レポートまでを担う月額定額の採用代行です。何人採用しても月額10万円〜・成果報酬0円。現在の求人と募集条件を拝見して、どこで応募が止まっているかを率直にお伝えします。

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歯科衛生士の求人票に必ず書く項目

項目書き方の要点
職種名「歯科衛生士(ブランク可・週2日〜)/〇〇駅徒歩3分」。対象と通勤を入れる
給与上限まで。経験加算の条件。パート向けの時給も併記
勤務時間時短の可否、最短の勤務日数、終業時刻の選択肢
休日年間休日日数、土曜の扱い、有給の取得実績
仕事内容SRP・TBI・メンテナンスの比率、1日の担当人数、アシスト業務の有無
設備・器材ユニット台数、使用スケーラー、口腔内カメラやマイクロの有無
職場体制DHの人数と年齢層、平均勤続年数、復職者の在籍
教育・研修院内勉強会の頻度、外部セミナーの費用負担、先輩がつく期間
診療方針予防中心か自費中心か。院長がどんな診療をしたいか

とくに「診療方針」を書いている医院はほとんどありません。予防に力を入れたい歯科衛生士にとって、院長の方針は転職先を選ぶ大きな理由になります。

「メンテナンスに1人30分確保しています」「予防の患者さんが月に〇名います」といった具体的な情報は、やりがいを求める層に強く効きます。

歯科衛生士の求人原稿の書き方を、実例で見る

項目を並べただけでは、実際に何をどう書けばいいのか分かりにくいと思います。よくある原稿と、同じ医院の情報を書き切った原稿を並べます。

よくある原稿

職種:歯科衛生士
給与:月給250,000円〜
勤務時間:9:00〜18:30
休日:日曜・祝日、その他
仕事内容:歯科衛生士業務全般
応募資格:歯科衛生士免許をお持ちの方。ブランク可。
その他:アットホームな職場です。スタッフ同士仲が良く、働きやすい環境です。

ここに書かれている情報で、求職者が判断できることはほとんどありません。「アットホーム」「働きやすい」は、どの医院の求人にも書いてあります。

情報を書き切った原稿

職種:歯科衛生士(ブランク可・週2日〜相談可)/〇〇駅 徒歩3分
給与:月給250,000〜320,000円(経験・保有スキルにより決定/3年以上の実務経験で28万円以上スタート)
    パート時給1,800〜2,200円
勤務時間:9:00〜18:30(休憩90分)/時短勤務可(9:00〜15:00、10:00〜16:00など相談可)
休日:日曜・祝日・木曜午後/年間休日122日/有給取得率は昨年度で〇%
仕事内容:メンテナンス・SRP・TBIが業務の約7割。1人あたり1日6〜8名を担当し、メンテナンスは1名30分を確保しています。診療アシストは残り3割程度です。
設備:ユニット5台/〇〇社製超音波スケーラー/口腔内カメラ全台設置/個室のメンテナンスルーム1室
職場体制:歯科医師2名・歯科衛生士4名(20代2名・30代1名・40代1名)・歯科助手2名。歯科衛生士の平均勤続年数は5年2ヶ月。4名のうち2名は出産後に復職したスタッフです。
教育:入職後1ヶ月は先輩衛生士が必ず同席します。院内勉強会は月1回。外部セミナーは年2回まで費用を医院が負担します。
診療方針:予防歯科に力を入れており、メンテナンスで来院される患者さんが月〇名います。1人の患者さんを長く担当していただきます。

ここに追加した情報は、すべて医院がすでに持っているものです。条件を上げたわけでも、新しい制度を作ったわけでもありません。書いていなかっただけです。

とくに効くのは「4名のうち2名は出産後に復職したスタッフです」の一文です。復職を迷っている人にとって、これ以上の安心材料はありません。「ブランク可」の3文字より、実在する事実のほうが強く伝わります。

「アットホーム」を具体に置き換える

よく書かれる表現置き換える情報
アットホームな職場ですスタッフ8名の年齢層/歯科衛生士の平均勤続年数
働きやすい環境です有給取得率/残業の実績時間/休憩室の有無
未経験・ブランクの方も歓迎復職者の在籍人数/先輩がつく期間/最初の1ヶ月の業務
スキルアップできます院内勉強会の頻度/外部セミナー費用の負担額
残業はほとんどありません昨年度の月平均残業時間/最終受付から片付け完了までの時間

求職者は複数の求人を並べて比較します。抽象的な言葉は、比較の材料になりません。数字と事実に置き換えたぶんだけ、候補として残ります。

歯科衛生士に検索で見つけてもらう原稿の工夫

どれだけ良い原稿を書いても、検索結果に出てこなければ読まれません。IndeedやGoogleしごと検索は、求職者が入力した言葉と求人原稿の言葉を照合しています。

  • 求職者が実際に打つ言葉を職種名に入れる「歯科衛生士 〇〇市」「歯科衛生士 パート」「歯科衛生士 ブランク」「歯科衛生士 週3」。これらは実際に検索されている組み合わせです。職種名にこの言葉が入っていない求人は、そもそも表示されません。
  • 勤務地は駅名と市区町村の両方を書く「〇〇市△△町」だけでは、駅名で探している人に届きません。逆に駅名だけでも、市区町村で探す人に届きません。両方書いてください。
  • 雇用形態ごとに求人を分ける1本の原稿に「常勤・パート同時募集」と書くと、どちらの検索でも中途半端な扱いになります。常勤とパートは別の求人として出したほうが、両方で上位に出ます。
  • 本文の冒頭150文字に要点を置く検索結果の一覧では、原稿の冒頭が抜粋表示されます。ここに「ブランク可」「週2日から」「駅徒歩3分」といった強みを置くと、クリック率が変わります。
  • 原稿を定期的に更新する掲載日が古い求人は表示順位が下がります。月に一度、内容を見直して更新するだけでも露出は維持できます。

ここまでが「掲載前にやること」です。この状態を作らずに掲載費を増やしても、費用対効果は上がりません。

歯科衛生士の募集条件と、求人を出す先

原稿を整えたうえで、給与の決め方と媒体の使い分け、費用の目安を整理します。

歯科衛生士の給与は「商圏内の他院」で決める

歯科衛生士の求職者は、通勤圏内の医院を並べて比較します。全国平均や地域相場ではなく、自院と同じ駅・同じエリアの求人が比較対象です。

まず次の作業をしてください。所要時間は30分です。

  1. 求人媒体で自院の最寄り駅を検索するIndeedやジョブメドレーで「歯科衛生士 〇〇駅」と検索し、出てくる求人を10件ほど開きます。
  2. 給与の下限・上限を書き出す月給と時給の両方。自院がどの位置にあるかを確認します。
  3. 勤務時間と休日の条件も並べる週休何日か、時短の可否、土曜の扱い。給与以外で差がついている項目が見えます。
  4. 下から数えたほうが早いなら、原稿では埋まらないこの場合に必要なのは条件の見直しです。原稿の書き方を延々と試すより先に判断してください。

逆に、条件が中位以上なのに応募が来ないなら、それは書き方の問題です。ここまでに挙げた項目を埋めれば動く可能性が高くなります。

歯科衛生士の求人は、どの媒体に出すか

媒体掲載費向いている使い方
Indeed無料掲載可/有料出稿で露出増復職層・パート希望者に届く。母数が最大
求人ボックス無料掲載可/有料出稿ありIndeedと併用。クリック単価を比較して配分
ジョブメドレー成功報酬型が中心資格保有者に届きやすい。歯科の掲載が多い
歯科特化の求人サイト有料または成功報酬現役の転職希望者。母集団は絞られる
エンゲージ・Airワーク無料採用ページを無料で作り、Indeed等へ連携
ハローワーク無料地元志向・復職層に届く

復職層を狙うならIndeedとハローワーク、現役の転職者を狙うならジョブメドレーや歯科特化サイトという使い分けになります。

歯科特化サイトだけに出している医院が多いのですが、そこを見ているのはすでに転職を決めている現役層だけです。約17万人の未就業層には届いていません。

歯科衛生士の採用にいくらかかるか

手段1名あたりの費用目安特徴
ハローワーク0円掲載費はかからないが、露出は限られる
無料媒体(エンゲージ・Airワーク)0円採用ページを作れる。単体では露出不足
Indeed・求人ボックス(有料出稿)数万〜数十万円掲載費の投じ方と原稿の精度で大きく変動
歯科特化サイト・ジョブメドレー数十万円資格保有者に届く。成功報酬型が中心
人材紹介60万〜120万円採用が決まるまで費用は発生しない

歯科衛生士は競争が激しい分、人材紹介の手数料も高くなりがちです。歯科衛生士の推定年収396.0万円(令和7年賃金構造基本統計調査より当社算出)で30%なら1名あたり118.8万円。DHが2名辞めて2名採用すれば230万円を超えます。

一方、自院で募集する場合の費用は掲載費が中心です。月5万〜15万円の出稿でも、原稿が整っていれば応募は集まります。費用の考え方は採用代行の費用相場|料金体系別の目安と一人あたりの採用単価で整理しています。

歯科衛生士の応募が来てから入職までにやること

応募が集まっても、返信や面接の進め方で決まらないことがあります。少人数の職場ならではの注意点もあります。

応募が来てからが勝負になる

歯科衛生士の求職者は、複数の医院に同時に応募しています。返信が遅れれば、その時点で候補から外れます。

  • 当日中に一次返信する診療の合間で難しい場合は、受付スタッフが返信できる定型文を用意しておいてください。院長が夜に対応する運用では間に合いません。
  • まず見学から入れる導線を作る「面接」はハードルが高くても、「見学だけ」なら来てもらえます。医院の雰囲気とスタッフの様子を見てもらうほうが、条件面の不利を補えます。
  • 面接には現役のDHを同席させる院長だけの面接では、求職者は実際の働き方を聞きにくくなります。同じ職種の先輩がいると、質問が出て相互理解が進みます。
  • 体験勤務を用意する半日でも実際に働いてもらうと、双方のミスマッチが大きく減ります。少人数の職場では、入ってからの相性が定着を左右します。

歯科衛生士の面接で聞くべきこと・聞いてはいけないこと

院長がひとりで面接をしていると、つい世間話のつもりで踏み込んだ質問をしてしまうことがあります。ここには法的なルールがあります。

厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、適性と能力に関係のない事項を応募書類に書かせたり、面接で尋ねたりすることは就職差別につながるおそれがあるとしています。

尋ねてはいけない事項

  • 本人に責任のない事項本籍・出生地、家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)、住宅状況(間取り・部屋数・住宅の種類など)、生活環境・家庭環境。
  • 本来自由であるべき事項宗教、支持政党、人生観・生活信条など。

歯科医院の面接で起こりがちなのが、「ご結婚のご予定は」「お子さんの保育園はどちらですか」「ご主人のお仕事は」といった質問です。悪意なく、勤務の見通しを知りたくて聞いてしまうケースです。

知りたいのが勤務可能な条件なら、そのまま条件を聞けば足ります。「勤務可能な曜日と時間帯を教えてください」「土曜の出勤は可能ですか」。これなら適性と能力の確認であり、求職者も答えやすくなります。

同資料は、あらかじめ質問項目と評価基準を決めておくことも求めています。面接シートを1枚作っておけば、その場の思いつきで聞いてしまう事故を防げます。

聞いておいたほうがよいこと

  1. これまで担当してきた業務の比率SRP・メンテナンス・TBI・アシストが、それぞれどれくらいだったか。前職との差がミスマッチの最大の原因です。
  2. 1日に担当していた患者数と、1名あたりの時間「1人15分で15名」の医院から「1人30分で7名」の医院に移ると、働き方の感覚がまったく変わります。
  3. 使ったことのある器材ブランクがある方には特に重要です。何を教える必要があるかが、この時点で分かります。
  4. 働き方の希望と、譲れない条件勤務日数・時間帯・土曜出勤の可否。ここを曖昧にしたまま採用すると、数ヶ月で辞めることになります。
  5. 前職を辞めた理由責める文脈ではなく、自院で同じことが起きないかを確認するために聞きます。

そして面接は、医院が選ぶ場であると同時に、求職者が医院を選ぶ場です。診療室を案内し、スタッフを紹介し、こちらから情報を出す時間を必ず取ってください。

歯科衛生士の募集開始から入職までのスケジュール

「来月から人が足りない」という段階で募集を始めても、間に合いません。逆算しておく必要があります。

時期やること
入職の3〜4ヶ月前商圏内の他院の条件を確認。募集条件(給与・勤務時間・時短枠の有無)を決める
3ヶ月前求人原稿を作成。院内写真の撮影。媒体を決めて掲載開始
2〜3ヶ月前応募対応・見学受け入れ・面接。応募が来なければ原稿と条件を見直す
1.5〜2ヶ月前内定。現職のある方は退職に1〜2ヶ月かかる前提で調整
入職後1ヶ月先輩が同席する期間。ブランクのある方はアシスト中心から

ポイントは「応募が来なかった場合の見直し期間」を最初から見込んでおくことです。1本目の原稿で応募が集まることは多くありません。2〜3週間動きがなければ、職種名と給与表記を変えて試します。

また、在職中の歯科衛生士は退職までに1〜2ヶ月かかります。内定から入職までの空白を見込まずにスケジュールを組むと、結局その期間を穴埋めできません。

採用より先に、いまの歯科衛生士を辞めさせない

1医院あたりの歯科衛生士が平均約2.0人という規模では、1人辞めるだけで診療体制が崩れます。

そして就業者の99%が女性である以上、ライフイベントによる離職は必ず起こります。避けられない前提で、続けられる設計にしておく必要があります。

  1. 出産・育児で辞めなくてよい選択肢を先に用意する時短勤務、週2〜3日勤務、パートへの切り替え。制度として用意しておけば、辞める前に相談してもらえます。
  2. 復職の道を残しておくやむを得ず離職する場合も、「戻ってきたいときは声をかけてください」と伝えているかどうかで数年後が変わります。
  3. 技術を伸ばせる機会を作る院内勉強会や外部セミナーの費用負担は、定着と採用の両方に効きます。求人票に書ける材料にもなります。
  4. 診療方針を共有する少人数の職場では、院長の考えが分からないまま働くのが最大のストレスになります。何を大事にしたいのかを言葉にして伝えてください。

歯科助手との役割分担を決めておく

歯科衛生士が辞める理由として現場でよく挙がるのが、「衛生士として採用されたのに、実際はアシスト業務ばかりだった」というものです。

歯科衛生士は国家資格であり、SRPやTBI、メンテナンスといった業務を担うために資格を取っています。受付や器具の洗浄、アシストに時間の大半を使う状態が続くと、資格を活かせないという理由で離れていきます。

  • 業務の比率を決めて、求人票にも書く「メンテナンス・SRPが約7割、アシストが約3割」のように明示します。入職後のギャップがなくなり、定着率が上がります。
  • 歯科助手を先に採用するという選択もある歯科衛生士が採れない状況で、アシスト業務を歯科助手に移せるなら、既存の衛生士の稼働が空きます。1名の衛生士を採るより、助手1名を採るほうが早く体制が整うケースがあります。
  • メンテナンスの時間枠を確保する1名あたり何分を確保しているかは、予防に関心のある歯科衛生士がもっとも見る条件のひとつです。

採用が難しい局面では、「歯科衛生士を採る」以外の解き方を検討する価値があります。助手の採用、業務の再配分、時短枠での複数採用。目的は人数を揃えることではなく、診療を回すことです。

定着率が上がると、求人票に書ける材料も増えます。「平均勤続5年」「復職者2名在籍」と書ける医院は、それだけで選ばれます。

歯科に限らず、応募が来ない原因は「見られていない」「選ばれていない」「応募後に離脱される」の3段階に切り分けられます。その手順は採用が難しい理由と対策|求人を出しても応募が来ない原因の切り分け方にまとめています。

それでも歯科衛生士を採用できない場合の3つの原因

  1. 給与が商圏内で下位にある前述の30分の作業で確認できます。下から数えたほうが早いなら、原稿では埋まりません。
  2. フルタイム・週5日勤務しか用意していない復職層のほとんどはここで脱落します。時短枠を作れないか、診療時間の一部だけでも任せられないかを検討してください。
  3. 応募後の対応が遅い応募数と面接実施数を比べてください。乖離しているなら、原因は求人票ではなく院内の対応です。

採用にいくらかかるかを先に押さえたい場合は、歯科衛生士の採用単価|紹介手数料の相場119万円と復職者の採り方で手法別の費用と、復職層に届く条件の書き方を解説しています。

自院で回せないときは、採用代行という選択肢がある

ここまでの内容は、すべて自院で実行できます。ただ診療をしながら毎週数字を見て原稿を直し続けるのは、院長にとって現実的ではありません。

採用代行(RPO)は、この「原稿を作り、掲載し、数字を見て直し続ける」部分を外に出すサービスです。

  • 向いているケース院長が診療の合間に求人を見ている。複数の医院・分院で募集している。人材紹介の手数料が重くなっている。復職層向けの求人を別に作りたいが手が回らない。
  • 向いていないケース給与が商圏内で明確に下位にある(条件の見直しが先)。年に1名採用するかどうか(月額の固定費が割高になる)。応募者への返信を院内で回せない(母集団形成型の代行では応募後の対応は医院側に残ります)。

採用代行の業務範囲や費用の考え方は、採用代行(RPO)とは?業務内容と費用相場、人材紹介との違いで整理しています。

歯科医院での対応範囲と進め方は歯科医院の採用代行サービスにまとめています。

よくある質問

ブランクのある歯科衛生士は戦力になりますか?

復帰までに時間はかかりますが、基礎ができている分、無資格者を育てるより早く戦力になります。

最初の1〜2ヶ月はアシスト中心にして、器材と術式に慣れてもらう。その後SRPやメンテナンスを任せていく。この流れを求人票に書いておくと、応募のハードルが大きく下がります。

週2日のパートを採用しても意味がありますか?

あります。フルタイム1名を待ち続けるより、週2日を2名採用したほうが早く体制が整うケースは多くあります。

また、パートから始めた人が生活の変化に合わせてフルタイムに移行することもあります。入口を広げておくことが、結果的に常勤の確保につながります。

新卒の採用は狙うべきですか?

養成施設は令和5年度で183校あり増加していますが、同資料によれば入学者は減少しています。新卒の母数は縮小傾向です。

加えて、新卒は教育の負担が大きく、平均約2.0人という体制では育てる余力がない医院も多いはずです。まずは復職層とパート層に目を向けるほうが現実的です。

求人票に載せる写真は何を撮ればよいですか?

外観と待合室だけでは伝わりません。診療室のユニット、使用している器材、スタッフルーム、実際に働いているスタッフの様子を撮ってください。

歯科衛生士は設備と清潔感を見ています。器材が新しい、動線が整っている、スタッフルームが快適といった要素は写真でしか伝わりません。

分院がある場合、求人はまとめてよいですか?

分けてください。歯科衛生士は通勤圏で探すため、医院ごとに勤務地を明記した求人が必要です。1つの求人に複数の勤務地を書くと、検索で絞り込まれにくくなります。

診療方針やユニット台数が違うなら、仕事内容も書き分けたほうが効果は上がります。

まとめ:歯科衛生士は奪い合うのではなく、掘り起こす

歯科衛生士の採用が難しいのは事実です。しかし「人がいない」わけではありません。

免許登録者314,143人に対して就業者は145,183人。約17万人が資格を持ちながら働いていません。就業者の99%が女性で、ライフイベントによる離職が多いことが背景にあります。

現役の14.5万人を同じ商圏で奪い合うのか、それとも働いていない17万人に届く求人を作るのか。後者に手をつけている医院は、ほとんどありません。

やることは2つです。ブランク・勤務時間・技術・人間関係という4つの不安に、求人票で先回りして答えること。そして時短枠を別の求人として出すことです。

私たちが運営する採用コミットは、この「原稿を作って、掲載して、数字を見て直し続ける」部分を引き受ける月額定額の採用代行です。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月)。面接と採否の判断は医院側に残ります。

ただし、給与が商圏内で明確に下位にある場合は、代行を入れても応募は増えません。そのときは「まず条件を見直したほうがよい」と正直にお伝えします。現在の求人を見せていただければ、どこで止まっているのかだけでも判断できます。

費用の面から検討するなら、採用単価とは?計算方法と職種別の相場、平均の見方に17職種の採用単価の相場をまとめています。

出典

  • 厚生労働省 医政局歯科保健課「歯科衛生士の現状と今後の検討の進め方について」歯科衛生士の業務のあり方等に関する検討会(第1回)(https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001363491.pdf)確認日 2026年9月9日。就業歯科衛生士数は「衛生行政報告例」、免許登録者数は歯科医療振興財団調べの数値を同資料がまとめたもの
  • 厚生労働省「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」結果の概要 表25 職種別にみた施設の常勤換算従事者数(歯科診療所の歯科衛生士134,110.3人・総数343,620.9人を歯科診療所66,818施設で除した値)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/dl/02sisetu05.pdf)確認日 2026年10月4日
  • 厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/22/)確認日 2026年9月9日
  • 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html)確認日 2026年10月4日。推定年収はきまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額で当社算出

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この記事を書いた人

弓川堅士のアバター 弓川堅士 代表取締役

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長を経て、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。

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