採用コスト削減の方法|手法別の相場と一人当たりを下げる順番

採用コストの削減で最も効くのは、社内の工夫ではありません。どの手法で採るかを変えることです。

厚生労働省の調査によれば、正社員1名あたりの平均採用コストは、スカウトサービスで91.4万円、民間職業紹介事業者で85.1万円。一方で求人情報まとめサイトは6.4万円、自社HPからの直接応募は2.8万円です。同じ1名でも32倍の開きがあります。

ただし、すべての職種を安い手法に置き換えられるわけではありません。この記事では、削減の効果が大きい順と、削ってはいけないものを公的データで整理します。

この記事の要点

採用コストの削減は、手法の置き換えで決まります。スカウト91.4万円・紹介会社85.1万円に対し、求人情報まとめサイトは6.4万円、自社HPからの直接応募は2.8万円。ただし置き換えられるかは職種によります。

  • 削減の順番を間違えない費用0円の改善(応募対応・求人原稿・対象範囲)が先。掲載費の見直しは最後です。
  • 職種で余地が違う一般事務は有効求人倍率0.37倍で紹介を使う必要がなく、施工管理は5.65倍で置き換えが難しい職種です。
  • 削ってはいけないもの応募への一次対応と、母集団を作る最低限の掲載費。ここを切ると採用数そのものが落ちます。

紹介手数料はこの2年で約1割上がっています。削減の必要性は今後も下がりません。

弓川堅士

弓川堅士

株式会社Abey
代表取締役

この記事の監修者

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長として組織づくり・採用業務を担い、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。現場で日々採用に向き合っている実務者の視点から、本記事の内容を監修しています。

目次

採用コスト削減の効果は「手法の置き換え」でほぼ決まる

厚生労働省が企業に対して行った調査では、採用手法ごとの1件あたり平均採用コストが集計されています。

採用手法別の1件あたり平均採用コストの横棒グラフ。スカウト91.4万円、民間職業紹介85.1万円、求人情報まとめサイト6.4万円、自社HP直接応募2.8万円
正社員1件あたりの平均採用コスト(厚生労働省・令和3年度調査)
採用手法正社員1件あたり非正社員1件あたり
スカウトサービス91.4万円ー
民間職業紹介事業者(紹介会社)85.1万円19.2万円
インターネットの求人情報サイト28.5万円ー
インターンからの就職12.4万円ー
求人情報誌・チラシ11.3万円7.7万円
新聞広告・屋外広告7.1万円ー
インターネットの求人情報まとめサイト6.4万円ー
知り合い・社員等からの紹介(縁故)4.4万円ー
自社HP等からの直接応募2.8万円ー
特別の法人等(地方公共団体・商工会議所等)1.0万円ー
SNS0.9万円ー

スカウトサービスの91.4万円と自社HPからの直接応募の2.8万円では、32倍の開きがあります。社内の細かい効率化で埋まる差ではありません。

ここで注目すべきは「インターネットの求人情報まとめサイト」の6.4万円です。Indeed・求人ボックスといった求人検索エンジンがこれにあたります。紹介会社の85.1万円に対して、およそ13分の1の水準です。

採用コストを本気で下げるなら、紹介・スカウトで採っている職種のうち、どれを求人検索エンジンに寄せられるかを検討するのが最短です。

なお、この調査は「アウトプレースメント」「委託募集」など回答数が少ない項目も含みます。回答数が一桁の手法は参考値として扱ってください。職種別・年収別の採用単価の考え方は採用単価とは?計算方法と職種別の相場、平均の見方で整理しています。

職種によって「削れる余地」はまったく違う

「紹介をやめて求人検索エンジンに寄せる」が常に正解とは限りません。媒体で母集団が作れる職種かどうかで判断が変わります。

職種別の有効求人倍率の棒グラフ。一般事務0.37倍、職業計1.10倍、看護師等2.12倍、医療技術者3.19倍、建築土木測量5.65倍
倍率が低いほど求職者が多く、自社募集に切り替えやすい(令和8年3月・常用パート含む)
  • 置き換えやすい職種(倍率1倍前後以下)一般事務は0.37倍で、求人1件に対して求職者が約2.7人います。会計事務も0.60倍。この層に紹介手数料を払う必要はほぼありません。求人検索エンジンと無料媒体で足ります。
  • 条件次第で置き換えられる職種(倍率2〜3倍台)看護師2.12倍、自動車運転2.51倍、介護3.63倍。未経験・時短・パートまで対象を広げられるなら、求人検索エンジンで母集団が作れます。経験者の常勤だけに絞ると難しくなります。
  • 置き換えが難しい職種(倍率5倍以上)建築・土木・測量技術者は5.65倍、建設躯体工事は7.35倍。求職者の絶対数が少なく、媒体に出しても順番待ちになります。ここは紹介を残すほうが合理的です。

つまり削減の第一歩は、「全部やめる」でも「全部続ける」でもなく、職種ごとに仕分けることです。事務職を紹介で採っているなら、そこが最も削りやすい費用です。

職種ごとの紹介手数料の目安は、中途採用の費用|一人当たりの相場と職種別の採用単価一覧に一覧でまとめています。

大手との賃金差が前提になる中小企業でのコストの考え方は中小企業向けの採用代行サービスでご案内しています。

採用コストを削減する順番

手法の置き換えは効果が大きい反面、失敗すると採用数そのものが落ちます。費用のかからない改善から順に進めるのが安全です。

  • 1. 応募への一次対応を速くする(費用0円・即効)応募当日に返信する、日程候補を3つ以上出す、オンライン面談を用意する。母集団を増やさずに採用数だけ増えるため、採用単価は確実に下がります。求職者は複数社に同時応募しているので、ここが最も早く効きます。
  • 2. 求人原稿に条件を書き切る(費用0円)給与の内訳、労働時間の実績、休日日数、業務の範囲、任せる裁量。書いていない項目は、いちばん不利に想像されます。応募単価が最も動くのがここです。
  • 3. 対象を広げる(費用0円)未経験、他業種、時短、パート、シニア、業務委託。要件を1つ外すだけで母集団が変わり、1名あたりの掲載費が下がります。
  • 4. 無料の窓口を併用する(費用0円)ハローワーク、エンゲージ、Airワーク、自社の採用ページ。自社HPからの直接応募は平均2.8万円で、最も安い手法のひとつです。
  • 5. 媒体の配分を見直す(費用の組み替え)媒体ごとにクリック単価と応募単価を比べ、効率のよいほうへ寄せます。1〜4をやったあとなら、数字を根拠に判断できます。
  • 6. 紹介の使い方を絞る(ここで大きく下がる)倍率の低い職種は自社募集へ、母集団が薄い職種だけ紹介を残す。85.1万円が6.4万円に置き換われば、1名あたり78万円以上の削減になります。

順番が逆になると失敗します。原稿も応募対応も整っていない状態で紹介を切ると、母集団が消えて採用数がゼロに近づきます。1〜4は準備、5〜6が本丸です。

エンジニアのように「求職者はいるのに決まらない」職種もあります。その構造はエンジニア採用の費用|職種別の相場と成立率7.3%の壁で整理しました。

削ってはいけない2つのコスト

応募対応にかける時間(内部コスト)

採用コストは外部コストと内部コストに分かれます。内部コストは求人原稿の作成、応募者への返信と日程調整、面接にかけた時間です。

削減対象として真っ先に目が向きがちですが、ここを削ると歩留まりが落ち、結果として採用単価が上がります。応募は増えたのに面接に至らない、という状態がいちばん高くつきます。

内部コストは「減らす」のではなく「外に出す」対象です。原稿制作と媒体運用を外部に任せ、応募者への返信・面接・採否の判断を社内に残すと、時間あたりの効率が上がります。判断の目安は採用代行の向き不向き|依頼する前に確認する3つの条件にまとめています。

母集団を作る最低限の掲載費

Indeedのような検索型の媒体は、無料掲載だけだと表示順位が上がりにくい構造です。掲載費をゼロにすると、求人が「出ているだけ」の状態になります。

月数万円の出稿を止めて、代わりに85万円の紹介手数料を払うことになれば本末転倒です。掲載費の削減は、応募数と採用数を見ながら少しずつ調整してください。

紹介手数料はこの2年で約1割上がっている

削減の必要性は、今後も下がりません。職業紹介事業者が報告した実績によると、常用就職1件あたりの手数料は次のように推移しています。

年度1件あたり手数料求人数(常用)就職件数(常用)
令和4年度約94万円約1,179万人約81万件
令和5年度約93万円約1,296万人約88万件
令和6年度約103万円約1,789万人約92万件

令和6年度は求人数が前年度比38.0%増えた一方、就職件数は4.8%増にとどまりました。1件を成立させるまでの工数が増えており、それが手数料に乗っています。

紹介に依存した採用を続ける限り、コストは上がる前提で予算を組む必要があります。中途採用全体の費用構造は中途採用の費用|一人当たりの相場と職種別の採用単価一覧で整理しました。

当社が運用した案件の採用単価

参考として、当社が求人検索エンジンで運用した案件の実績です。いずれも業務委託ポジションで、掲載費を採用人数で割った数値です。

  • 営業職(未経験・業務委託)2ヶ月で117名の応募、5名採用。採用単価4万円、応募単価1,709円、面接単価1.1万円。
  • コーチング職(塾講師系・業務委託)4ヶ月で170件の応募、12名採用。採用単価3.3万円、応募単価2,352円、面接単価1.1万円。

いずれも媒体で母集団が作りやすい職種で、かつ複数名を採用した案件です。採用単価は職種・業種・地域・募集条件・時期により大きく変動し、同等の成果を保証するものではありません。有資格職や経験者の1名採用では、ここまで下がりません。

それでも、厚生労働省の調査で求人情報まとめサイトの平均が6.4万円であることを踏まえれば、媒体で母集団が作れる職種なら一桁万円台は現実的な水準だと言えます。

中小企業が大手と条件でどこまで差があるかは、中小企業の採用コスト|一人当たりの相場と大企業との賃金差で整理しました。

採用コストの削減についてよくある質問

採用コストを削減する方法で最も効果があるのはどれですか?

手法の置き換えです。スカウトサービス91.4万円・紹介会社85.1万円に対し、求人情報まとめサイトは6.4万円、自社HPからの直接応募は2.8万円(厚生労働省・令和3年度調査)。1名あたり78万円以上の差が出ます。

ただし置き換えられるかは職種によります。有効求人倍率が1倍前後以下の職種(令和8年3月時点で一般事務0.37倍、会計事務0.60倍)は、紹介を使わなくても母集団が作れます。

採用コストを削減すると採用の質は落ちますか?

削り方によります。応募への返信を速くする、求人原稿に条件を書き切るといった改善は、母集団を減らさずに単価だけ下げるため質は落ちません。

一方で掲載費をいきなり切る、応募対応の時間を削るといった削り方は、母集団と歩留まりの両方を落とします。順番として、費用のかからない改善を先にやってください。

人材紹介は完全にやめるべきですか?

職種で分けるのが現実的です。有効求人倍率が5倍を超える職種(令和8年3月時点で建築・土木・測量技術者5.65倍、建設躯体工事7.35倍)は求職者の絶対数が少なく、媒体に出しても順番待ちになります。

倍率の低い職種を自社募集に移し、母集団が薄い職種だけ紹介を残すという仕分けが、最も無理がありません。全部やめると採用数が落ち、全部続けると予算が持ちません。

助成金で採用コストは下がりますか?

対象になる場合は下がりますが、採用コストそのものを削る施策ではありません。特定の対象者を雇い入れた場合などに、あとから支給されるものです。

要件と手続きが細かく、受給までに時間がかかります。先に手法の置き換えと原稿の改善で構造的に下げ、助成金は使えるものがあれば使う、という順番が現実的です。

採用担当がいなくても削減できますか?

できます。むしろ人事担当がいない会社ほど、社長や現場の管理職が本業の合間に対応している分の内部コストが大きくなっています。

原稿制作と媒体運用を外に出し、応募者への返信・面接・採否の判断を社内に残すと、外部コストと内部コストの両方が下がることがあります。比べるときは、外部に払う金額だけでなく社内の時間も金額に置き換えてください。

まとめ:削る順番を間違えなければ、採用数は落ちない

採用コストの削減で最も効くのは手法の置き換えです。スカウト91.4万円・紹介会社85.1万円に対し、求人情報まとめサイトは6.4万円、自社HPからの直接応募は2.8万円。32倍の開きがあります。

ただし置き換えられるかは職種次第です。一般事務0.37倍のように求職者のほうが多い職種はすぐ移せますし、施工管理5.65倍のように母集団が薄い職種は紹介を残すほうが合理的です。

そして順番があります。応募対応、求人原稿、対象範囲という費用0円の改善が先。掲載費と紹介の見直しは、その土台ができてからです。逆にすると母集団が消えます。

私たちが運営する採用コミットは、株式会社Abeyが提供する月額定額の採用代行です。求人原稿の制作からIndeed・求人ボックス・エンゲージ・Airワーク・ジョブメドレー等の媒体運用、週次レポートまでを担い、応募者への返信・面接・採否の判断は自社に残ります。料金は初期費用10万円・月額10万円〜、成果報酬0円、採用人数の上限なし(税別・最低契約期間3ヶ月・媒体掲載費は別途)。何人採用しても月額が変わらないため、採用数が増えるほど1名あたりの単価は下がります。

プランごとの詳細は料金プランのページに掲載しています。まずはその職種が媒体で母集団を作れるかどうかだけでもお伝えできます。難しい職種は、その理由もお伝えします。

削減の前に、そもそも応募が止まっている場所を特定しておくと無駄がありません。切り分けの手順は採用が難しい理由と対策|求人を出しても応募が来ない原因の切り分け方にまとめました。

出典

本記事は株式会社Abey(採用代行サービス「採用コミット」運営)が制作しました。採用コスト・手数料・有効求人倍率の数値は上記の原典を確認したうえで記載し、調査名と年度、確認日を併記しています。手法別の平均採用コストは令和3年度の調査結果であり、回答数が少ない手法(アウトプレースメント、委託募集など)は参考値です。当社実績の採用単価は実際に運用した案件の数値ですが、業務委託・未経験・複数名同時採用という条件下のもので、職種・地域・募集条件により変動し、同等の成果を保証するものではありません。

この記事を書いた人

弓川堅士のアバター 弓川堅士 代表取締役

長崎大学卒業後、上場企業グループ会社の事業部長を経て、株式会社Abeyを創業。
月10万円からの採用業務代行サービス「採用コミット」を立ち上げ、主に中小企業の中途採用(正社員・業務委託採用)を母集団形成から支援。

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